同盟が消える日 ──米国発衝撃報告
谷口智彦 編訳
日米同盟がいまにも破綻しかけている。衝撃の事実が、元・国防総省高官が公表したあるレポートだ。
そこには、日本にとってもアメリカにとっても、危機的(末期的)症状ともいえる事柄が浮き彫りになった。本書では、この衝撃のレポートの紹介に加え、軍事の専門家等の座談会も収録。座談会では、このレポートをどう読むべきか、普天間問題、在日米軍とは日本人にとって何か、核の問題、日本の政治力・交渉力についても網羅し、今後の日本と、そして日米関係を考える上で必要不可欠な書。
◇四六判並製、212頁
◇定価1470円(本体1400円+税)
◇2010年2月20日発行
<著者プロフィール>
谷口智彦(たにぐち・ともひこ)
1957年生まれ。慶應義塾大学大学院SDM研究科特別招聘教授、明治大学国際日本学部客員教授ほか。JBPressコラムニスト。2005~08年、外務省外務副報道官、広報文化交流部参事官として外国プレス対応、スピーチライティングを手がける。その以前約20年『日経ビジネス』記者、編集委員。この間ロンドン外国プレス協会会長、米ブルッキングズ研究所CNAPS招聘給費研究員、上海国際問題研究所客座研究員、米プリンストン大学フルブライト客員研究員など歴任。著書に『通貨燃ゆ 円・元・ドル・ユーロの同時代史』(日本経済新聞社)ほか。
「解説」より
この本は、もうひとつ別の小冊子を内包した構成になっている。
「入れ子」に相当するのが米国発のパンフレットで、こちらを一刻も早く訳出刊行したいと考えたのが企画の発端である。それに座談会などを付し、読みやすさと理解の便宜をはかったうえ、体裁を整え出版しようとするのが本書である。
「外れてしまった期待をどうする(Managing Unmet Expectations)」という題名をもつのがその小冊子だ。二〇〇九年十一月、米国のNBRというシンクタンクから世に出た。NBRがどういう機関かはいずれ触れることになるけれども、小冊子は、その内容に驚くべき論点をいろいろと含んでいた。
やや誇張して言うと、「来るべきもの――日本へ向けた一種の三行半――が遂に来た」という感さえ与えるものだったのである。
急ぎ訳出し、およそ日本の行く末と、日米関係の将来に関心を持つほどの人にはみな読んでもらいたいと念じたゆえんだ。
パンフレットとそれを収める本書の出版は、二〇〇九年秋、日本に発足した民主党主導の連立政権が対米関係の舵取りを初発から甚だしく失敗し、沖縄における海兵隊の基地移設をめぐって自ら問題を作り、かつ悪化させ続けた時期に、まさしく重なることとなった。
後掲の座談会が尖鋭な危機意識と共に触れているとおり、政権交代によって外交・安全保障政策の衝に初めて当たることとなった民主党連立政権は、この小冊子が予想した以上に、というより、予想の範囲それ自体をはるかに超える速度と深度で、日米関係の土台にヒビを入れ続けている。
その結果として、本書の出版は恐らく平常以上に時宜を得たものになったかもしれない。だとすれば皮肉な話である。
ただし、小冊子が投げかける問いは、日米同盟の本質に否応なく思いを致させるものである。その意味合いは、東京における政権の転変などとは無縁、一朝一夕の解決など望むべくもないと思わせるものだ。だから本書、とりわけパンフレット部分の寿命は決して短命に終わらないだろうと予期せざるを得ないことは、この本が帯びたもうひとつのアイロニーであり、歓迎すべからざる現実である。
来るべきものが来たなどと思わせたのは、小冊子が持つどんな特色の故だろうか。
大きくいうとそれは次の二点である。いずれの点も、このパンフレットの著者ほどの、専門家にしてかつ実務経験者が、これまで口にしたことのなかったところだ。
まず、日米相互の不信が昂じていくうち、ついには日本、米国のそれぞれが、安全保障を日米同盟に頼るのをやめてしまうかもしれないと指摘したことである。
同盟とは別の、過去に試みたことのない道を模索するよう、それぞれが歩み始めないとは限らないと、パンフレットは明言した(例えば日本が舵を大きく切り対中接近・宥和策に出る可能性をパンフレットは示唆しているけれども、これなど一部は小沢一郎・民主党幹事長の手によって早くも実現しつつあるかのようだ)。
第二の特色とは、日米同盟を論じるに当たり、これを実用上のメカニズムとして現に使う立場から、「ユーザーの目線」で書こうとしたところにある。これまた出色と言わねばならない。「ボトムアップ」のこの尺度を当ててこそ、小冊子が言うように、同盟がその名に値しない実態をはっきり認識できるからである。
(続きは本書でお読み下さい)
<目次>
解説──米国発衝撃報告 その「衝撃」の意味とは
米側から出てきた「日米安保無力論」
日米同盟には「離別」も選択肢
「日本売り」の勧め など
第一部 座談会
ローレス、フィネガンらの報告書をめぐって
金田秀昭+谷内正太郎+山口昇
第二部 外れてしまった期待をどうする
第一章 米日同盟の強さはうわべだけ。実態はガラス細工?
第二章 歴史の中の米日同盟
第三章 高まる期待、広がる誤解
第四章 ついに充たされない期待と思い込み
第五章 米国と日本、期待のミスマッチ
第六章 危機回避のため期待をすりあわせよ
結論 中国から見てここぞという瞬間、確実に倒れる同盟とは


