世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年9月13日

»著者プロフィール

 フィナンシャル・タイムズ紙コラムニストのルースが、8月14日付同紙にて、米国の現実主義はトランプと共に沈み、ヒラリー・クリントン政権の下、「米例外主義」が復活するのではないか、と分析しています。要旨、次の通り。

iStock

国益のみを追求すべし

 最近まで世界中のほとんどが、米国にもっと普通の国になってほしいと思っていた。ブッシュの自由主義アジェンダには辟易し、「米例外主義」を排斥していた。トランプは、普遍的な価値を高く掲げることが米国の使命であるとの信念を嘲る最初の米大統領候補である。一方、クリントンはそうした価値の支持者である。

 米国のリアリストは「国益のみを追求すべし」と言ってきたが、トランプが彼らの代表になるような事態を不思議に思わざるを得ないだろう。トランプは、イラク戦争のような海外での関与を忌避し、米国の同盟国は防衛費を拡大すべし、南シナ海で中国は自分の名前の付いた海の環礁を占領する権利がある、とする。これらは、リアリストが聞きたいことである。しかし、トランプは、ISへの核攻撃を約束し、オバマがISを作ったと言うなどして、物事を損ねている。リアリズム成功の鍵は、戦術的狡猾さと世界への深い理解である。トランプは全くその逆である。

 11月にトランプは、その外交上の直感にもかかわらず、クリントンに負けるだろう。米国民は、軍事的冒険にはうんざりしており、トランプの「アメリカ第一」のスローガンに、多くのアメリカ人が満足している。トランプが負けるとしたら、大統領にふさわしくない気質、米国の殆ど全てのグループを攻撃する傾向のせいである。

 リアリストにとり不幸なことに彼らの船はトランプと共に沈む。来年1月、米例外主義がクリントンの下で再び浮上してくるだろう。オバマの外交政策は、例外主義でも現実主義でもなく、両者の混合であった。

 多くの人が、クリントンはオバマ政権の最初の国務長官だったので、オバマを引き継ぐと考えているが、大統領に仕えることと大統領になることは異なる。オバマ1期目のすべての軍事的問題において、クリントンはタカ派的立場をとった。リビアへの介入のように採用された場合もあれば、シリアの反乱軍への武器供給のように退けられたこともある。イラン核交渉には早くから関与したが、今の合意にオバマ同様署名したかは疑わしい。

 クリントンの選挙戦のレトリックはオバマのそれとは異なる。2008年にオバマは、ブッシュの戦争後の世界において米国の道徳的権威を復活させると約束した。クリントンは、危険な世界に対しあらゆる手段で関与すると述べた。
オバマはかつて、自分の外交政策へのアプローチを「愚かなことをしない」と要約した。クリントンは、オバマの格言は組織原理にはならない、と言った。もちろんクリントンは正しい。しかし有害なことをしないという本能は、意外と価値があるかもしれない。

出典:Edward Luce,‘The return of American exceptionalism’(Financial Times, August, 14, 2016)
http://www.ft.com/cms/s/0/1476d7ca-6076-11e6-b38c-7b39cbb1138a.html#axzz4HRgOa5Tc

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る