2024年4月20日(土)

WEDGE REPORT

2016年9月9日

 先に触れた通り、アメリカでiPhoneは高級品である。しかし、日本では最もイニシャルコストがかからない、買い方によってはタダになるかバックマージンまでもらえてしまう端末である。

 世界の携帯電話市場をみると、アメリカ、中国、日本というのは規模の大きなマーケットであり、日本市場を押さえていることの意味は大きい。日本で大量のiPhoneをばらまき、限界利益が出せるだけの数量を生産することができれば、残りの地域ではニッチな高級機種として販売していくこともできよう。

 日本のフィーチャーフォンはガラケーと呼ばれ、その所以(ゆえん)はご存じの通り、スマホ登場以前に日本だけ国内端末メーカーが、携帯電話を独占するガラパゴスのような市場というところからきている。

 スマホになり、アップルやサムスン、LGといった海外メーカーに門戸は開かれたが、今度はアップルが日本で異常にシェアが高いという他国には見られない状況がつくり出され、第二のガラパゴスと化した市場になっている。これがiPhoneの高い収益性を支える仕組みになっていると言える。

 ちなみに携帯キャリア各社が安価にiPhoneをばらまいてもアップルの利益が損なわれるわけではない。iPhoneを安く売るための原資は日本のメーカーがつくったガラケーやスマホを使い続けている人たちが支払っている端末料金や通信料金からの収益である。

 最初のガラパゴスでは日本の端末メーカーに収益が入る仕組みであったが、新しいガラパゴスでは日本のメーカーからアップルへ収益が吸い上げられるという、まだ前のガラパゴスのほうが良かったのではないかという状況になっている。

 いずれにせよ、アップルに残された時間は少ないのかもしれない。それは、アップルに依存する日本のサプライヤーにも危機が迫っていることを意味するのは言うまでもない。

  
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◆Wedge2016年10月号より

 


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