WEDGE REPORT

2016年9月15日

 韓国といえば、日本の20倍近くトウガラシを消費するトウガラシ大国。その生産現場が今、危機に瀕している。理由は隣国中国から流入する安価なトウガラシ。対策を迫られる産地が注目したのが、トウガラシのブランド化で一歩先を行く日本だった。このほど産地のイムシル(任実)郡から首長である郡守を筆頭に、視察団が都内を訪れた。

古くからの産地が加工強化にかじ

 9月4日、新宿御苑をイムシル郡の役人、トウガラシ加工工場の社長、農家など総勢24人が訪れた。名目は加工産業育成のための「国外先進地研修」だ。同郡は全羅北道に位置し、人口は約3万人。60歳以上が人口の6割を超え、高齢化が深刻な地域だ。昔からトウガラシ生産が盛んで、生産農家は人口の1割に達する。その生産量は200トンと、日本全体の生産量に匹敵する規模で、トウガラシを粉末にする最新式の設備を備えた巨大な工場が建設されたばかりだ。

イムシル郡から訪れた視察団

 そんなイムシル郡も、韓国のトウガラシ産地の例に漏れず、2000年ごろから輸入量の増加が顕著になった中国産トウガラシに悩まされている。中国産は既に国内消費量の6割に達し、来年には7割を超える勢い。トウガラシは収穫が機械化されていない上、収穫後にひと房ひと房はさみで切り離す必要があり、作業に膨大な時間を要する。そのため、人件費の安い中国には価格面で到底太刀打ちできない。中国産の価格は韓国産の2分の1から3分の1だ。

練馬区の生産農家の視察のようす

 中国産農産物の流入はトウガラシに限った話ではなく、農家は打撃を受けている。その対策に、国を挙げて取り組もうとしているのが6次産業化だ。イムシル郡農政課のキム・ミョンジン係長は「産地振興には6次化が欠かせないという考えに立って、国の主導で加工工場を中心に整備の支援を積極的に進めている」と説明する。

 その一環で、郡ではまずトウガラシ粉の製造工場をつくった。しかし粉を作っただけでは大した付加価値にはならない。「粉だけでは農家の所得が上がらないため、キムチづくりに欠かせない薬味の製造工場をつくって農家の所得を上げることにした」(同)。農家が高齢化している上、若者も収入の低さから就農しない悪循環に陥っており、新工場建設を起爆剤にトウガラシ産業を振興したいという。

 期待のかかるこのプロジェクトに十全を期すべく、世界に数あるトウガラシ産地の中から先進地として視察先に選んだのが、新宿を中心にしたトウガラシの6次化の動きだったのだ。

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る