2024年4月25日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年9月20日

 アフリカに向き合う姿勢は、中印日3国で異なっています。中国は、もともとは国連での台湾問題からアフリカでのプレゼンスの強化を図ってきましたが、その後は石油、ニッケル、銅から鉄鉱石、ウランに至る資源に対する関心からアフリカ諸国との関係を強めています。さらに最近では中国の国際的影響力の強化という観点からも、アフリカへの進出を試みています。

日本のアフリカに対する関心は多面的

 インドは歴史的に東アフリカと交易を行ってきましたが、近年は自らの勢力圏と考えるインド洋への中国の急速な進出を警戒し、インド洋に面するアフリカ諸国にレーダー基地などを設け、監視網を作りつつあります。

 日本のアフリカに対する関心は多面的です。まず、戦後の日本のアジア援助の成功体験をアフリカにも広めようとの考えがありました。オイルショック後の石油供給源の多角化の一環としてもアフリカに関心を持ちました。国連の安保理常任理事国入りを目指し、国連の大票田であるアフリカに注目したのは当然でした。さらに1980年代貿易黒字の国際的批判を受けた日本は、その対策の一環としてアフリカに対するODAの増加を図ったのです。

 このように日本のアフリカに対する関心の動機は多岐にわたりますが、国益の増進の点で、中国のアプローチが露骨であるのに対し、日本は、アフリカとの共存共栄を図るというのが基本理念です。それを端的に示しているのがアフリカ開発会議(TICAD)の主催です。TICADは日本政府の呼びかけで1993年に発足、日本政府が主導するものの、国連、国連開発計画(UNDP)、アフリカ連合委員会(AUC)と世銀との共同開催です。TICAD VIは、アフリカ諸国の希望を入れて今年8月27~28日に初めてアフリカ(ケニア)で開催されました。このようにTICADはアフリカ諸国の「オーナーシップ」と国際社会における「パートナーシップ」を重視するもので、アフリカ諸国から高い評価を得ています。

 中国のアフリカ援助は、「グッドガバナンス」などのIMF等のコンディショナリティを無視して実施される場合が多く、一部の専制的アフリカ政府には歓迎されるでしょうが、問題です。中国の物量作戦に日本は押され気味ですが、長期的に見れば、アフリカ諸国の「オーナーシップ」を重視する日本の援助の方がアフリカ諸国の利益にかなうことは明らかで、短期的に中国の影響力の増大に幻惑されることがあっても、日本は日本流の援助を続けるべきでしょう。
 

  
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