世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年9月23日

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 8月20日付の米ワシントンポスト紙が「TPPでないのなら、何なのか」という社説を掲載し、オバマ政権中のTPP批准が遠ざかっていることを認めたうえで、TPPは米国のアジアでのプレゼンスの支柱であると述べ、TPPの重要性を強調しています。ワシントンポスト紙の社説の論旨は、次の通りです。

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遠ざかるTPP批准

 オバマ政権は議会に、大統領選挙後、オバマ政権中のTPPの批准を引き続き求めている。しかし、現実主義に立てば、TPP批准の可能性が遠ざかっていることを認めざるをえない。政治的に騒がしかった今年、米国は、TPPだけではなく、貿易拡大の多数国間取り決め全般に敵対的になった。

 したがって今こそ、自由貿易の批判者たちに挑戦する時である。あなた方の代替案は何なのか、と。トランプのような人たちは、単純に、中国、メキシコその他が「盗んだ」米国の雇用を保護主義措置で取り戻すのだというだろう。
クリントンにとり問題はもっとむずかしい。彼女はサンダースの圧力で立場を変えるまで、TPPの正当性を受け入れていた。彼女は、米国の経済的利益を認識するのみならず、米国の国家安全保障上の利益も評価していた。

 国家安全保障上の利益は重要である。しかし、貿易の国内経済への影響に焦点を当てた政治討論ではしばしば見逃される。戦後、米国はGATTの成立を支援した。通商関係の拡大は米戦略を支援した。自由貿易とルールに基づく関係の網は、米国の軍事、政治力を、ソフト・パワーとして補完するものと考えられた。TPPは経済的に互恵になるが、それ以上にオバマ政権の「アジアへの軸足移動」の手段として、戦略的にもっと重要である。TPPは、中国が権威主義・重商主義的な規範で地域を支配する計画を平和裏に変更させたいと考える米国、日本、その他の小国の絆を強める。

 もしTPPがなくなれば、他の制度がこの役割を果たさなければならない。中国との貿易拡大を主張したビル・クリントン大統領などは、今の苦境を予測しなかった。中国のWTO加盟の頃のコンセンサスは、西側の市場へのアクセスが中国の野心や行動を穏健にし、開放的でルールに基づく経済に移行させるというものであった。教訓は既に学ばれた。中国からの挑発に加え、北朝鮮の攻撃的な姿勢、フィリピンのドゥテルテ大統領の不安な指導力があるなかで、この重要な地域にしっかりとした米国のコミットメントを維持する理由がある。

出 典:Washington Post ‘If not the Trans-Pacific Partnership, then what?’ (August 20, 2016)
https://www.washingtonpost.com/opinions/if-not-tpp-then-what/2016/08/20/dc86f4d2-6569-11e6-96c0-37533479f3f5_story.html?utm_term=.cc5d824007a2

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