風の谷幼稚園 3歳から心を育てる

2010年2月25日

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野村 滋 (のむら・しげる)

株式会社コンテンツ・ファクトリー代表

情報誌会社勤務時代に取材で、創立間もない風の谷幼稚園と出会う。その後12年間、風の谷幼稚園の変遷を追い続けている。風の谷幼稚園の教育実践記『4歳の胸のうち』『5歳の誇り』を同社から出版。

班ごとにリーダー決めの話し合いをしました。4班でリーダーをやってみたいと手を挙げたのは萌ちゃんと元くんです。
「(リーダーは)萌だよ!」「オレだよ!」の言い合いが続きます。そんな2人の様子を見守る他のメンバーたち。そのうちに萌ちゃん、元くんはお互いに身を乗り出して「萌!」「オレだ!」と額と額をぶつけ合う勢いで言い合い、いっこうに進展しません。
すると、そんな様子を見兼ねた悠翔くんが「ケンカしても、しょうがないだろ!」と一喝。そう言われ今度は元くん、泣き出してしまいました。慌てたのは仲間たち。「えっ!? 何で泣くの?」「泣いたってしょうがないじゃん」「泣くのはおかしいよ」と口々に言っています。 
風2組 学級通信 「麦」より

 前回、「リーダー決め」という取り組みを通じて、「目指すべき人物像」を明確にし、「人を見る目」を育てていく活動をご紹介した。今回は「リーダー決め」の後編として、もうひとつの大切な教育意図について見ていこう。

指摘をアドバイスとして
受け止められる感性を

 さて、「リーダーがいた方がいい」「こんな人にリーダーになってほしい」という合意はできたものの、「リーダー決め」はまさにここからが本番。「では、いったい誰がリーダーになるのか」という実際の選考においては、冒頭のエピソードのような状態からスタートすることになる。さて、この話はどのように展開していくのか? 再び学級通信を見てみよう。

そして私(先生)の所へやってきました。「先生、元くんと萌ちゃんがやりたい、やりたいってケンカして、元くんが泣いちゃった・・・」と説明を始める奏ちゃん。事の次第を聞き、他の仲間たちはどう思っているのかを聞いてみることにしました。
「萌ちゃんの方がいいと思う」と悠翔くん。どうしてか、理由を聞くと「萌ちゃんの方がいろいろ考えられると思うから」ということでした。健くんは、どっちがいいのか「わからない」、奏ちゃんは「萌ちゃんは優しいから」という理由で萌ちゃんを選び、功征くんは「元くんより萌ちゃんの方がしっかりしていると思う」と萌ちゃんを支持。真愛ちゃんは「元くんはたまに困っちゃうから・・・」と言います。具体的にどんな時なのか聞いてみると「あのね、あのね・・・話とかを聞いてない時があるから」と真愛ちゃん。自分の思っていることを、何とか自分の言葉で表現しよう、そんなふうに感じる真愛ちゃんの口ぶりでした。
仲間の言葉を聞き、ガックリと肩を落とす元くん。そして「じゃあ、萌ちゃんでいいよ」となったのでした。
話し合い直後、元くんに声をかけようとしたその時「元くんだってさぁ、話をちゃんと聞くようにすればいいんだよ」と、元くんの肩をポンッと叩きながら言う悠翔くんなのでした。
風2組 学級通信 「麦」より

 リーダーに複数の子どもが立候補したものの、「選ばれる人は1人だけ」というのが現実である。そこで、風の谷幼稚園では「なぜ、その人がリーダーにふさわしいのか、ふさわしくないのか」という議論を子どもたちにさせる。「選ばれなかった理由」を指摘される子どもにとっては、一見厳しいとも思えるこの議論を通じて、子どもたちに何を学ばせようとしているのだろうか?

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