チャイナ・ウォッチャーの視点

2010年2月24日

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 中国では今年、2月13日から21日まで旧正月(春節)の長い休みであったが、例年の通り、春節の十数日前の2月初頭から帰省ラッシュが始まり、家族と離れて暮らす人々、出稼ぎ労働者や大学生など、老若男女を問わず、人々はいっせいに家族の待つ故郷へ帰っていった。毎年恒例の「民族大移動」である。

恐くて実家に帰れない? 「恐帰族」って一体何?

 しかし今年の旧正月には、「帰省前線」にある異変が生じた。大都会に出て就職している一部の若者たちに、実家への帰省をためらって中止するケースが急速に増えたという。彼らは「恐帰族」(帰省するのを恐れる人々)と呼ばれて、メディアからも注目を浴びている。

 「恐帰族」の中には、とくに農村から都市部に出て大学や企業に籍を置く若者が多いようであるが、彼らは一体何のために「恐帰」となったのか。その理由は、「恐帰族」の一人となった若者がネット上で公表した「父親への懺悔書」を読めばよく分かってくるのである。

 「懺悔書」の書き手は去年の9月に大学を出たばかりの新米社会人で、両親は農村部で暮らす普通の農民である。今年のお正月に帰省しないことを決めた後、彼はこの「懺悔書」を書き上げて自分の悔しさを歴々と吐露している。

涙を誘うある若者の懺悔書

 彼がここで陳述した自らの「恐帰」の理由はこうである。

 「大学を卒業して就職してから半年も経った(訳者注、中国の大学の新学期は9月から)。しかし今、月給はわずか1000元程度で自分が食うのがやっとである。父親の出稼ぎ賃金よりも安月給であるから、両親にはとても報告できない。俺の通帳の残額は今やたったの500元、数日後には下宿の家賃の300元を払わなければならない。帰省するための旅費は一体どこにあるのか。机の上にあるインスタント拉麺の山は俺に残される唯一の食糧だ。このような状況だから、俺はどうやって帰省するのか。たとえば借金して帰省できたとしても、両親から都会での生活ぶりを聞かれたら俺はどう答えたら良いのか。真実を告白する勇気があるわけはない。結局、お正月中に会社で仕事をしないといけないからとの口実を使って両親に帰省しないことを告げた。就職後の初めての俺の帰省を待ち望んでいた両親はどれほど失望したのか。今に思えば心が痛む。しかし仕方がない。俺のできる唯一のことはすなわち、この一文を書いて両親に懺悔することだ」

 涙を誘うようなこの「懺悔書」だが、日本でそれを紹介していると、世界の「経済大国」となったはずの中国でそんなこともあるのか、と怪しまれるのかもしれない。が、書き手の訴えているような苦境は、今の中国では紛れもない現実なのである。

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