BBC News

2016年10月4日

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ミシェル・ロバーツ、ヘルス編集長、BBCニュース

今年のノーベル医学生理学賞が3日、東京工業大栄誉教授の大隅良典氏に決まった。細胞が不要物のリサイクルによって健康を維持する仕組みを明らかにした。

大隅教授は、「オートファジー」と呼ばれる「自食作用」を制御する複数の遺伝子を発見。こうした遺伝子に問題が起きると病気につながるため、大隅氏の研究によって、がんからパーキンソン病に至る様々な病気の仕組みの理解が深まることになる。

「自食」

体が自分の細胞を自ら破壊する。これは良いことには思えないかもしれないが、「オートファジー」は体が生存のために使う自然の防衛機能だ。

「オートファジー」の仕組みによって、体は飢餓状態に対応できるし、たとえば細菌やウイルスの侵入にも対抗できる。

また古い老廃物を廃棄することで、新しい細胞の誕生が可能になる。

「オートファジー」が機能しなくなると、認知症など高齢化に伴う様々な疾患につながる。

がんをはじめとする複数の病気について、「オートファジー」機能に直接働きかける薬の研究開発が進んでいる。

「オートファジー」の概念は50年以上前から知られていたが、理解が一気に前進したのは、大隅氏が1980年代や90年代に酵母の細胞で研究と実験を始めたのがきっかけだった。

大隅教授は、ノーベル賞受賞に驚きつつも「研究者としてこの上なく光栄なこと」と喜んでいるという。

NHKに対して大隅氏は、「私たちの体の中では、たんぱく質が作られている分、たんぱく質が壊れています。このことから私は、細胞の中で『たんぱく質が自分自身を食べて、分解するという現象』に注目しました」と話し、「自食」の繰り返しが生命現象の根幹だと説明している。

「オートファジー」に詳しい英ケンブリッジ大学のデイビッド・ルービンスタイン教授は、大隅博士の重要な研究成果が認められ、賞に選ばれたのはとても嬉しいと話した。

「酵母を使った先駆的な研究が、オートファジーの鍵となる遺伝子や基本的な生化学作用の発見につながった。オートファジーは酵母から人間に至るまで、続いている。大隅教授の実験成果のおかげで、多様な生理作用や疾病においてオートファジーが果たす重要な役割を、各地の実験室が確認できるようになった」

「様々な感染症やがんのほか、ハンチントン病や一部のパーキンソン病など様々な神経変性疾患にも、オートファジーは関わっている。中には、オートファジー操作が治療の鍵となり得る病気もある」

スウェーデンのカロリンスカ医科大で発表されたノーベル医学生理学賞には、270人以上の研究者が候補となっていた。受賞者には賞金800万スウェーデンクローナ(約9400万円)が贈られる。

(英語記事 Medicine Nobel for cell recycling work

提供元:http://www.bbc.com/japanese/37548610

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