チャイナ・ウォッチャーの視点

2010年2月24日

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 その証拠に、この「懺悔書」がネットで公表されると忽ち大きな反響を呼び、似たような告白が続々と出てきてネット上を覆うような勢いである。それがきっかけとなって「恐帰族」の実態がマスコミの関心を呼んだ。そしてマスコミの報道を通じて全国的関心を呼び、今や大きな話題となった注目の社会現象なのである。

金がない恐帰族、蟻族の悲劇

 ある新聞社はさっそく、「恐帰族」に関するアンケート調査をネット上で公開したが、その結果、帰省しない若者の約43%は「帰省のための出費が負担できない」ことを一番の理由として挙げてたことが判明している。やはり前述の「懺悔書」の書き手の場合と同様、「金がない」ことは「恐帰族」が帰省しないことの最大の理由となっているわけである。

 私はかつてこのコラム(「09年中国のキーワードはバブルと蟻族」)で、大学を卒業していても就職できずに、故郷から離れた大都会の周辺で喰うや喰わずの雑居生活をしている若者たち、すなわち「蟻族」たちの生態をリポートしたことがあるが、今度はまた、就職できても収入が少ないという理由で帰省もできない「恐帰族」の苦境を目の当りにしているのである。

繁栄しているはずの中国
なぜ若者は救われないのか?

 経済が十数年以上にわたって「繁栄」してきているはずの中国で、多くの若者たちがそれほどに苦しい状況下にあるというのは、一体どういうことなのだろうか。

 それに関して、2月4日発売の『半月談』という論壇誌は、「社会上昇の機会が減少、新しい世代の焦燥感」との論文を掲載して、「経済繁栄」とは裏腹の若者たちの貧困と失意の原因を探ってみたが、その原因分析は下記のようなものである。

 曰く、30年前からの「改革・開放」政策の実施とそれに伴う経済成長の前段階では、事業で成功して富を手に入れる機会が爆発的に増えて、人々に平等に与えられていた。その時代、多くの若者たちは時代の波に乗って成功のチャンスをつかみ、自らの社会的上昇の道を開いた。しかし、経済成長の後期となると、貧富の格差が開くにしたがって、権力と富が一部の「利権集団」に徐々に集中してきて、社会の頂点に立つそれらの「利権集団」が社会的資源と機会を独占するようになった。このような社会構造は結局、個人個人の若者たちから成功する機会を奪い取り、彼らを富の獲得と地位上昇への入り口から自動的に排除してしまったのである。

 その結果、多くの若者たちは成功へのチャンスと夢を失い、権力と富から疎外された中で貧困の生活を強いられて焦燥感をますます募らせていると、上述の論文が克明に陳述・分析しているのである。

社会への不満が「革命思想」を生む

 このように、今の中国では、多くの若者たちは成功の機会と未来への夢を奪われて、富と権力から排斥されているような状況下にいるが、中国社会の今後の行方を占う上では、それは大いに注目すべき大問題の一つであろう。

 というのも、若者が夢とチャンスを奪われているような社会が長期的な安定を保てないのは自明のことであり、富と権力から疎外される若き知識人がやがて反乱と革命の中核となっていくというのは中国の歴史の常であるからである。

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