前向きに読み解く経済の裏側

2016年10月10日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

久留米大学商学部教授

1981年、東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。主に調査関連部署に勤務した後、2005年に銀行を退行して久留米大学へ。著書に『増補改訂 よくわかる日本経済入門』(朝日新書)、『老後破産しないためのお金の教科書』(東洋経済新報社)、『世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書』(宝島社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)など多数。

 データは重要です。データに基づかない議論は説得力がありませんし、独善に陥る可能性が高くなります。しかし、データを妄信することも危険です。バックミラーを見て運転するようなものだからです。データ至上主義者に「勘ピューターも加味しないと」と言っても、なかなか受け入れてもらえませんが。今回は、データ至上主義の危険性について考えてみましょう。

バブル期に銀行が不動産融資を増やした一因はデータ過信

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 バブル期に不動産投資が過熱した一因に「土地神話」があったと言われています。「戦後、土地の値段は一度も下がったことがないから、今回も大丈夫だ」と人々が信じていた、というのです。バブル期の人々は、客観的な過去のデータから将来を予測していた、ということなのでしょう。

 銀行内部でも、過去データが分析され、「過去の不動産担保融資の焦げ付き率は低い。特に、過去1年の焦げ付き率はゼロに近い。だから不動産担保融資は安全なのだ」といった議論が行われていたのでしょう。バブル期は地価が上がり続けていたので、融資が焦げ付くはずがありません。借金が返せない場合には不動産を売却して返済することが容易だったからです。そんな時期のデータを用いて「今後も不動産担保融資は焦げ付かない」と予想していたのだとすれば、問題でしょう。

 リーマン・ショック前、米国で住宅バブルが発生していました。米国では住宅ローンを証券化して売却する手法が多用されていますが、その際に重要なのは格付けです。問題なのは、格付けが過去の焦げ付き率を参考に決められている事です。バブル期の邦銀と同様、米国で証券化商品を購入した人々は、格付けという過去データの分析結果を妄信した、ということだったわけです。

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