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2016年10月5日

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米大統領選の投票日に向けて唯一の副大統領候補同士のテレビ討論会が4日夜、バージニア州のロングウッド大学で行われた。共和党候補のマイク・ペンス氏(インディアナ州知事)と民主党候補のティム・ケイン氏(バージニア州選出上院議員)は冒頭から、相手の大統領候補、ヒラリー・クリントン氏とドナルド・トランプ氏をそれぞれ厳しく批判し合った。

ケイン氏はトランプ氏を「まぬけか狂人」になぞらえ、ペンス氏はクリントン氏を「弱腰で無定見」と批判した。

「トランプ政権」が実現した際の核の危険性を強調したケイン氏は、共和党関係者が重視するレーガン元大統領の言葉をあえて引用し、核拡散の末には「まぬけか狂人」が「壊滅的な事態」を引き起こしかねないと発言。また、トランプ氏の気質を批判し、「ミス・ユニバースとツイッターで争うだけで、墓穴を掘ってしまうような人だ」と皮肉った。

一方でペンス氏は、クリントン氏が国務長官として「弱腰で無定見」な指導者だったために、今のロシアの強硬化を許してしまったと批判した。

ケイン氏は冒頭で、トランプ氏が選挙戦開始と同時にメキシコ人を侮辱し、オバマ大統領が米国出身でないという陰謀論を繰り返し、女性や退役軍人を侮辱したと批判。トランプ氏のこうした様々な言動をどうしてペンス氏が擁護できるのかと追及し、メキシコとの国境に壁を造るというトランプ氏の公約をペンス氏が「ぼやかそうとしている」と批判。さらに「この国は移民が作った国だ」と、不法移民排斥を強力に掲げるトランプ氏を批判した。

ケイン氏の発言を首を振りながら聞いていたペンス氏が、「ケイン上院議員から侮辱の言葉が雪崩のように落ちてくるのを聞いていたが」と切り出すと、ケイン氏が「ぜんぶドナルドの言葉ですよ、知事」と切り返す一幕もあった。

これに対してペンス氏は、「(ケイン氏は)我々が、侮辱中心の選挙戦を展開していると言うが」と前置きして、「正直言って、ドナルド・トランプが言ったとあなたが言うことをすべてそのまま言ったとしても、ヒラリー・クリントンほどじゃない。ヒラリー・クリントンは私たちの支持者の半分について、『どうしようもない連中がバスケットに入っている』と言った。救いがたい、アメリカ人じゃないと、彼女は言ったんだ」と反論した。

これについてケイン氏は、クリントン氏がこの発言について「おおざっぱすぎる」と撤回したのに対して、トランプ氏は何ひとつ謝罪していないと改めて批判した。

税金と安全

さらに、トランプ氏が納税記録を公表していないことや、巨額損失を相殺するため18年間にわたり連邦所得税を納めていなかったという報道を受けて、司会者がトランプ氏のやり方は公平かと質問。ペンス氏は、「トランプ氏は実業家で政治家ではない、事業が大変なこともあった」と答えたが、ケイン氏はトランプ氏を厳しく批判。「どうして納税記録を公表しないんだ」「選挙戦の初めに納税記録を公表すると約束したのに、その約束を破った」「ニクソン大統領でさえ納税記録を公表した」と繰り返し、ペンス氏に説明を求めた。

ペンス氏は、トランプ氏が連邦税が免除されるよう税法を「見事に」活用したと評価。これに対してケイン氏は、「税金を納めている自分たちは馬鹿なのか?」、軍隊や学校のための費用を負担しないことが「賢い」のかと反論した。

両候補はさらに、相手の政策が増税や社会保障費の増額につながると批判し合った。

警察暴力について司会者が質問すると、ペンス氏は、米国の警察には差別的傾向があるとクリントン氏が発言したことを批判。ケイン氏に向かって「あらゆる機会をとらえて警察を侮辱するのはもうたくさんだ」と叱責した。するとケイン氏は「警察の差別問題を話題にすることを、怖がってはならない」と反論。これにケイン氏は「私は怖がっていない」と応じた。

また米国は8年前より安全かという司会者の質問に対して、ペンス氏は「バラク・オバマが大統領になった日から、この国は前より安全ではなくなった」と回答。これに対してケイン氏は、「テロを倒せる候補はひとりだけ、ヒラリー・クリントンだ。オサマ・ビンラディンを倒した国家安全保障チームのひとりだった彼女なら、イスラム国の指導者アブ・バクル・アルバグダディも倒すだろう」と強調した。

ロシア関係について聞かれると、ケイン氏は「ヒラリーはロシアに立ち向かうことができるが、トランプは何度も何度もウラジーミル・プーチンを称賛してきたし、ロシアの大統領に近い財閥と明らかにビジネス関係がある。独裁と指導力の違いが分からないなら、小学校5年生の公民活動と指導力の授業を受け直すべきだ」と批判した。

これに対してペンス氏は、プーチン氏はトランプ氏の強さを尊重するはずだ。「単純な話だ」と反論。さらに「ロシアの小柄で傲慢な指導者の方が、今の米政権よりも国際舞台で強力だった。これはつらい真実だ」と発言。これはプーチン氏支持の言葉ではなく、「ヒラリー・クリントンとバラク・オバマの弱腰で無定見な指導力への告発だ」と述べた。

トランプ財団とクリントン財団

両大統領候補が慈善活動のために設けている財団が話題になると、ペンス氏はクリントン財団について、クリントン夫妻が外国政府から献金を集めるための装置で、「クリントン財団を私的サーバーで運営していたのを見て、国民はヒラリー・クリントンを信頼しない」と批判した。

これに対してケイン氏は、国務長官としてクリントン氏は財団の利益になるような行動は一切とらず、国務省はクリントン財団は慈善団体としてまったく無問題だと判定したと強調。対照的にトランプ財団は「世界中に触手を伸ばしたタコのような組織」で慈善団体としての実態はなく、資金的恩恵を受けるのはトランプ家の子供たちだけだと批判した。

副大統領候補2人自身の見解は

ペンス氏は、福音主義のキリスト教徒で社会的保守層から支持されている。一方でインディアナ州知事として昨年、事業主は信仰を理由に接客を拒否できるという条例を承認。これは実質的な少数性愛者差別だと激しく批判された。また胎児の障害程度などを理由にした中絶を禁止する、国内でも最も厳しい条例を今年3月に成立させた。さらにシリア難民がインディアナ州民の安全を脅かすと主張して州内定住を禁止する方針を打ち出したが、これについては連邦高裁が「悪夢の憶測」だと批判し、差し止めを命令している。

シリア難民のインディアナ州定住を禁止しようとしたことについて、ペンス氏は討論会で「フランスの9/11と呼ばれたパリ連続攻撃にシリア難民が2人関与していた。同じ間違うにしても、米国民の安全を守る方に傾いて間違わないと駄目だ」と反論。これについてケイン氏は、ペンス氏が米国建国の基本理念を裏切ったと強く非難した。

一方のケイン氏はカトリック信者で個人的には人工中絶に反対しているが、女性の人工中絶権は憲法で保障されていると連邦最高裁が判断した「ロー対ウェード」判例は基本的に支持している。また死刑制度についても、個人的には反対しつつ国の制度としては遂行するという立場だが、共和党はケイン氏がバージニア州知事として死刑囚を終身刑に減刑したことなどを批判している。

討論会で人工中絶が議題に上ると、ペンス氏は「もうすぐこの世に生れ落ちようとする子供が、その命を奪われるなど、私には受け入れがたい」と強く反対。一方でケイン氏は、「米国の女性が自らの良心に問いかけ、妊娠について自ら判断する権利は憲法が保障しており、私たちはその権利を尊重する。中絶を選んだ女性は罰するべきだというドナルド・トランプの考えに賛成しない」と述べた。これに対してペンス氏は、トランプ政権でも中絶した女性が罰せられることはないと反論。トランプ氏が「罰する」と発言したのは言い間違いで、「彼はあなたやヒラリー・クリントンみたいな、百戦錬磨の政治家ではないのだから」と弁護した。

最後に、「選挙後にこの国をどう団結させるのか」という司会者の質問に、ケイン氏は「投票日が終われば、協力し合うことが目標だ」と答え、超党派で連携してきた実績がクリントン氏にはあると述べた。一方でペンス氏は、「米国民をひとつにまとめるには何より、ワシントンを変えることだ。この国の方向性を本当に変えられるポテンシャルがある。ドナルド・トランプが米国大統領になれば、米国民は堂々と立ち上がる」と述べ、トランプ氏は「米国のカムバック」実現に必要な才能とビジネス知識を備えていると称えた。

討論会の司会者はCBSニュースのエレイン・キハノ氏。90分間で9つの論点を取り上げた。

2回目の大統領候補討論会は9日夜、ミズーリ州セントルイスのワシントン大学で行われる。

9月26日夜の第1回大統領候補討論会は、調査会社ニールセンによると8400万人という記録的な人数が視聴した。

(英語記事 US election: Pence and Kaine square off in vice-presidential debate

提供元:http://www.bbc.com/japanese/37559373

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