2024年4月24日(水)

古希バックパッカー海外放浪記

2016年10月30日

サンフランシスコに留学中のソウル出身のアリスとオジサン。後ろでは巡礼者たちが巡礼宿の中庭で思い思いに休息している

 アリスはソウルの大学生で自宅もソウル市近郊。一年前に就職試験を受けたが希望していた企業は全滅。彼女の父親は中小企業経営者であり米国で修士号を取得すれば韓国企業への就職に有利と判断してアリスを留学させることにしたという。修士修了後の2年後であれば多少なりとも韓国経済も回復して企業の新卒求人数も増えるであろうという希望的観測もあった。

 このような理由で海外留学するケースはアリス以外の何人かの韓国人からも聞いていた。彼らの話を要約すると韓国社会では高学歴や特別なコネがなければ有名企業に就職できないという閉塞的状況がある。そのため学歴をかさ上げするため米国等に留学するのだという。さらに、やる気のある学生なら無理して韓国企業に就職するよりも、米国・カナダ・豪州に留学してその国で就職したほうが自由で豊かな人生が送れるという認識が韓国社会では広く浸透しているという。

 アリスと話していて彼女が自分の意志で留学したのではなく父親の見栄のために米国留学したという印象を受けた。彼女自身自分が将来何をしたいのか具体的希望がないようであった。「自分では本当は何を希望している?」と敢えて聞くと、かなり間をおいてから「マザー・テレサのように貧しい人たちを救う仕事をしたい」と迷いながら言った。「大学院では具体的に貧民救済につながるような勉強をするの?」と更に聞くと、「よくわからない」と頼りにならない回答。

 韓国社会の閉塞感と家族の期待のはざまでアリスは出口を探して彷徨っているようだった。


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