2024年4月25日(木)

前向き女性になれる やわらかライフ&やわらかマネー

2016年11月18日

転職をしないリスク

 それなら転職なんてしない方が良いのかといえば、そうとも限りません。同じ会社に勤め続けることがリスクになることもあります。

 何が起こるかわからない時代、大手企業が倒産することもあります。今はどんなに好調な企業でも、この先ずっと安泰とは限りません。突然ボーナスがカットされたり、仕事がなくなったりが絶対にないとは限りません。今の会社でしか通用しない人材でいると、そうした事態に直面したときに対処できない恐れがあるのです。

【朝倉加代子(仮名)43歳】

 朝倉さんは、私がかつて勤めていた企業にいた女性で新卒以来20年勤続していました。その会社は100年続く老舗企業で、社風が古く、昇給システムも典型的な勤続給でした。勤続年数が長い彼女は、手取り50万円以上の月収に加え、ボーナスを年間100万円以上もらっていたようです。

 しかし彼女の仕事内容は、入社まもない社員とほとんど変わらないものでした。求められるのは、ルーティンの仕事を期日までに済ませ、たまに会議に出ることくらい。業務内容は毎年同じことの繰り返しで、創造性を求められる仕事でもありませんでした。

 にもかかわらず、いつも締め切り間際になって焦り出します。昨日まで定時で帰っていたのに、急に思い立って猛スピードで仕事を始め、「もうこれから1週間は終電よ!」といって残業をしていました。

 その会社には彼女のような新卒入社の社員のほか、転職入社の社員もたくさんいました。転職組の中には業務を改善しようと働きかける人もいましたが、彼女のもとでは暖簾に腕押しでした。十年以上前から繰り返している彼女のやり方が正しいと押し通され、それを踏襲させられていました。

 彼女は社内での経験はとても豊富でした。ただ、その会社のことしか知らず、自分がやってきた仕事の仕方だけが正しいと信じて疑わない姿勢には、なんだか危うさを感じました。きっとこの会社がある限り、彼女の人生は安泰なのでしょう。もし会社が倒産したり、ほかの会社に出向することになったりしたら、彼女はどうなるのだろうかと。長年勤めているほかの社員はそうではありませんでしたが、外の世界に目を向けずにいると、柔軟性が失われてしまうのかもしれないと感じたのです。

 会社の業績が良く、仕事に不満がなく、給料にも満足しているなら、取り立てて転職を考える理由はないでしょう。ひとつの会社に勤め続け、仕事を深く理解し習得していくことは素晴らしいことです。同じ会社に勤め続けていても、さまざまな人と関わり、より多くの業務を経験・担当するなどで培われるものは限りなくあるはずです。

 ただ、ある特定の文化や慣習が社会のスタンダードだと思い込んでしまうのはもったいないことです。自社や自分の物差しをたまには外して、人々の多様性を受け入れ、新しい価値観を取り入れ、創造性のある仕事をすることで、成長のチャンスは広がっていくと思います。


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