世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年10月17日

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 習近平体制下の中国では、政治面における人権抑圧が強化され、経済面では、一般に「中所得国の罠」といわれる失速状況が続いています。なかでも、経済面での解決策をめぐっては、共産党最高部内において路線の対立が見られるというのが、今日の多数説でしょう。

 本論評は、中国の今日抱える問題を「鄧小平の改革開放路線」と比較しています。30数年前に打ち出された鄧小平の当時の改革開放路線と、今日の状況を比較するというのは、あまりにも迂遠すぎる観があります。ただし、政治的、経済的に見て、今日の中国の持つ問題点についての個々の指摘には、もっともな点が多いと言えるでしょう。

腐敗汚職から無縁な共産党幹部がいるのか?

 反腐敗運動の結果、昨年は30万人が汚職により逮捕されたといいます。一時国民はこの運動に「熱狂したが、今は、汚職の規模に愕然としている」との本論評の記述は、的確でしょう。中国共産党幹部で腐敗汚職から無縁である人たちが、どの程度いるのか、というのが誰しもの関心事でしょう。

 今日の中国の言論統制の方向が、反西側、反自由主義、反日に向けられ、「センシティブ(「敏感」)」という言葉が学術会議等で不都合な話題の排除に使われている、というのは正しい指摘です。来年1月に発効する「NGO規制法」が、外国のNGOとの協力を治安当局のより強い監視下に置こうとしていることには警戒を要するでしょう。また、年内にも承認される予定の「サイバーセキュリティー法」が成立すれば、インターネット、メディア上の情報の流れがますます強く規制されることとなるでしょう。その影響は外国企業にも及ぶこととなるかもしれません。

 失速する経済の立て直しをめぐって、習近平と李克強の間に経済政策をめぐる路線対立、ひいては、権力闘争が続いているとの推測が強まりつつあります。それは、なかでも最近の天津市トップの黄興国の失脚、遼寧省の全人代代表30数人の突然の更迭という異常事態に関連したものです。一党独裁下では、政策をめぐる路線対立は権力闘争と紙一重であると言わねばなりません。

  
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