学びなおしのリスク論

2016年10月14日

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漆原次郎 (うるしはら・じろう)

1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、科学技術関連の記事を寄稿。早稲田大学大学院科学技術ジャーナリスト養成プログラム修了。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。著書に『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』『日産驚異の会議』『宇宙飛行士になるには』など。

「2回接種」を済ませていない世代

堀成美氏。看護師、感染症対策専門職、日本性感染症学会認定士。民間病院、公立病院の感染症科勤務を経て、国立感染症研究所実地疫学専門家コースの研修を受け2009年に修了。聖路加国際大学で助教(看護教育学/感染症看護)を務める。2013年より国際感染症センター国際感染症対策室に勤務(感染症対策専門職)。一般向けには、講演やツイッターなどで感染症対策についての啓発活動を行っている。Twitter:@narumita

 「たしかに麻疹はワクチンのおかげで怖いものではなくなってきた感があります。しかし、感染症の怖さを忘れて、『予防接種なんて要らないのでは』と思ってしまうことが怖い。それこそがワクチンの“副作用”なのです」と、堀氏は話す。

 予防接種をしている人の率が高いほど、その感染症が拡大するリスクは低くなる。逆に、率が低いほど、ウイルス感染の連鎖を止められない人が社会に多くいることになるから、感染症拡大のリスクは高くなる。 

 「今回の麻疹についても、マスメディアが騒いだのでたいへんな問題に見えたかもしれません。でも、私たちからすれば、よく抑えられているなという感じです。ワクチン接種率の高さが効いているのでしょう。けれども、現状のレベルで満足してはいけません」

 堀氏は、ワクチン接種をめぐる、感染拡大を引き起こしかねない問題点を複数、挙げる。

 ひとつは「2回接種」を済ませていない世代があることだ。1回より2回ワクチンを接種するほうが、確実に感染予防の効果は高まると堀氏は言う。「1回接種した人の5%ぐらいは免疫が付かないのです。また、なんらかの理由で1回目の機会に接種しそこねたという人もいます」。

 現在20歳代後半以降の世代では、麻疹ワクチンや麻疹風疹混合ワクチンを「2回接種」した人の率は急激に落ちる。9年前の2007年に麻疹が高校生や大学生のあいだで流行したのもこの世代に1回のみの接種者が多かったのが要因と見られている。

 自分が過去に何回ワクチンを接種したのかは母子手帳を見るなどすればわかるが、「接種したかどうかわからないとき、回数が不明な場合はそのまま接種することで早期に免疫を付けることができる。流行期でなければ血液検査をして確認してからでもいい」と堀氏は話す。

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