したたか者の流儀

2016年10月22日

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パスカル・ヤン (Pascal Yan)

著述家

著述家。ルーヴァン・カトリック大学大学院中退(ベルギー)。証券マンとして25年間、欧州を中心に海外で過ごす。現在の職業は都内大学教授。

 

 亡くなって7年以上経つだろうか、カトリーヌ・ドヌーヴや名優フィリップ・ノワレと、パリのブラスリーLIPPで隣になった。軽く挨拶して一言二言話したが、サインをもらえる雰囲気ではなく、そういう場所でもない。セレブの日常なのだ。LIPPはサンジェルマン・デプレの名店で、ありとあらゆる有名人がやってくる。一見さんは奥席には行けない。フィリップ・ノワレはナポレオン・ミルフイユをぱくついたが、ほとんど残したと記憶している。彼の『ニューシネマパラダイス』や『イル・ポスティーノ』をよく覚えている。その後数週間で訃報を聞いた。既に体が悪く好物の巨大ミルフイユをやっと一口食べたのかも知れない。

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 最近東京で同様のものを食べた。今はなきマキシムドパリ東京の名物でもあったようだが、現在ソニービルのパブで似たものが食せる。そもそも、1800年当初のパリの菓子レシピー集に登場するのでナポレオンの好物というのは、史実であろう。何がどうしたのかわからないが、正しくはミル・フイユすなわち千枚の葉という薄焼きのパイ菓子を日本では、千の娘と発音している。

 専門家がしたり顔で、「ミルは粉ひき小屋でして、フィーユはフランス語の娘です。したがって、粉にまみれた娘でありますので、こうしてカスタードクリームとパイに粉がかかって」との説明を聞いたことがある。道理でパリよりおいしいものが日本には沢山ある。なんせ粉屋の娘ですから。

韓国の韓進(HANJIN)の破綻

 そんなマキシムやLIPPの名物を食べながらソニービルのパブで新聞を読んでいると、韓国の韓進(HANJIN)の破綻の記事が出ていた。年間に日本の8倍も鉄をつくってしまった中国が、減速しているので致し方のないことであろう。そもそも、なぜ急にゼロ近辺から日本の8倍まで鉄鋼生産を増やしてしまったのか不思議だ。日本の生産量が異常で、高炉会社が5社もあり世界の製鉄工場であった。その後の鉄冷えで当方は再編が進んだが、日本の8倍とは尋常ではないサイズだろう。当時ブラジルやオーストラリアから船を仕立てて原材料を運んだ結果、船会社も好景気に沸いた。

 不定期船の運賃はバルチック指数でわかるが、動きはきわめて荒い。10倍上昇後9割下落も当然のように起きるようだ。10倍だというので舟を作るが完成する頃には新造船の山ができて、船荷がない状態にもなる。その逆もあるので各種の憶測や怪情報が渦巻く。

 そんな世界で生き残る我が日本郵船は見上げたものだ。街で時々郵船ビルというのを見るが、むべなるかな。これらがなければ変動が激しくて生きて行けない。しかし、誰も新造船を作っていないときに、スエズ運河の封鎖などの事件があると、とんでもない大きな利益も出るのであろう。

 中国経済の減速をもろに受けた韓進の苦悩は大きい。同根の大韓航空が全面支援すれば良さそうに見えるが、ナッツリターンが尾を引いているのだろうか。一方で先に悪化していた同業の現代商船は、一応難を逃れたと伝え聞いた。ともかく、世界中の港にHANJINコンテナを積んだ船が何隻も沖待ちしているさまは、壮観とさえいえるだろう。その一方で、世界経済の拡大と共に、過去貿易額は当然のように拡大し続けていたが、この頃様子がおかしい。

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