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2016年10月17日

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内部告発サイト「ウィキリークス」は、米大統領選の民主党候補ヒラリー・クリントン氏の選対本部長のメール内容を公表し続けている。ウィキリークスは、ジョン・ポデスタ選対委員長のメールを始め、ハッキングで流出したクリントン陣営のメール数万通を、11月8日の投票日までに公表する方針を示している。

ポデスタ選対委員長は、自分のメールアカウントをハッキングしたのはロシア政府で、共和党候補ドナルド・トランプ氏の陣営はハッキングを事前に承知していたと非難している。

ポデスタ氏はこれまで、メール内容の真偽について確認することを拒否。どのメールが具体的に虚偽だとは特定していないが、一部のメールの内容が改ざんされた可能性を示唆している。

ウィキリークスが今回公表しているメールは、クリントン氏が国務長官時代に私用サーバーを使用したメール問題とは別件。

ウィキリークスによる漏洩メール公表で何が明らかになったのか?


「クリントン一家は忘れない」

クリントン陣営は、大統領選のイリノイ州予備選の時期を1カ月遅らせようとした。3月1日のスーパーチューズデーの結果を受けて、穏健中道派の共和党候補が勢いに乗らないようにしたいというのが狙いだったとされる。

2014年11月に、後にクリントン選対本部長となるロビー・ムック氏はポデスタ氏に「クリントン一家は、友人への恩義を忘れない」と書いた上で、イリノイ州の民主党支持者は「大統領から忘れられ、無視されていると感じている」ため、予備選の日程変更は難しいだろうと推測している。

イリノイ州予備選は結果的に、予定通り3月15日に行われた。


シリア「隠密」行動

国務長官を2013年2月に退任した4カ月後、クリントン氏はゴールドマン・サックスの有料講演会で、秘密裏にシリアに介入したいと述べていたという。

ロイド・ブランクファイン会長兼CEOの質問に答え、クリントン氏は「米国として可能な限り隠密に、介入するべきだと考えていた」と話したという。

リベラル派にタカ派だと批判されることの多いクリントン氏はさらに、「こういうことに関して、この国は昔の方がずっと上手だった。今では、ご承知の通り、みんな我慢がでkない。みんなして仲良しの記者とかに言わずにはいられないんです。『見て見てこんなことしてるの、自分の手柄だよ』って」と述べた。

サウスカロライナ州で開かれたゴールドマン・サックス社員向けの講演会で、クリントン氏は講演料22万5000ドル(約2400万円)を受け取っている。


「中国を包囲」

漏洩メールによるとクリントン氏は、もし北朝鮮の敵対行為を中国が制止できない、あるいは制止するつもりがないなら、米政府はミサイル防衛システムで周辺地域を取り囲むしかないと中国政府関係者に伝えたという。

2013年6月のゴールドマンサックス講演会で、クリントン氏は「なので中国、いい加減にしなさい。(北朝鮮を)制御するか、さもなければこちらは防衛しなくてはならない」と発言したという。

さらにクリントン氏は、北朝鮮のミサイルの脅威に対抗するため、周辺海域に軍艦を増派するつもりだと話したという。

クリントン氏は国務長官として中国を7回訪れ、米政府の「アジア・ピボット」外交政策の構築に協力した。一方の中国政府は、オバマ政権のこのアジア重視政策に疑いの目を向けてきた。


カトリックによる信仰の「劣化」

クリントン氏の現首席広報官ジェニファー・パルミエリ氏と、リベラル系シンクタンクの研究者ジョン・ハルピン氏は2011年のメールで、メディア王ルーパート・マードック氏が子供たちをカトリックとして育てているという雑誌記事について、悪口を交わしていたという。

カトリックを自認するハルピン氏はメールで、「保守運動の中も最も影響力のある部分はカトリックだ。(中略)系統だったものの考え方や、ジェンダーに対する(非常に)後ろ向きな考え方に惹かれているんだろう」と書き、「信仰をとんでもなく劣化させている」と付け加えたという。

パルミエリはこれに対して、「社会的に一番受け入れやすい、政治的に保守的な宗教」だと大勢に思われているのだろうと返信したとされる。パルミエリ氏はこのほど、メールの内容に覚えはないと反論。「私はカトリックです」と補足している。


「公的な立ち位置と私的な立ち位置」

ウォール街の金融関係者に対する有料講演会を繰り返したクリントン氏はそのなかで、「政治はソーセージづくりに似ています。作っているところはおいしくなさそうで、ずっとそうでしたが、だいたい必要なところにたどりつきます」と述べた。

「でもみんなに見られていると、密室での話し合いや取り引きをぜんぶ見られていると、みんなちょっと神経質になるわけです。控えめに言っても。なので、公的な立ち位置と私的な立ち位置が両方必用なんです」

この発言の直前にクリントン氏は、スティーブン・スピルバーグ監督の映画「リンカーン」を観たばかりだと説明。映画は、奴隷解放を目指すリンカーン大統領が憲法修正条項第13条を可決するために重ねた政治駆け引きの様子を描いている。

民主党予備選でクリントン氏と戦ったバーニー・サンダース氏は、ウォール街での有料講演会の発言録を公表するよう、クリントン陣営に繰り返し呼び掛けていた。


討論会の質問を事前に

漏洩メールによると、今年3月の予備選中にCNNが主催したタウンホール形式の対話会で、クリントン陣営は事前に質問をひとつ入手していたという。

CNNのレギュラー出演者だったドナ・ブラジル現民主党全国委員長は3月12日、クリントン氏側近たちへのメールの表題に「ときどき事前に質問を知らされる」と書き、死刑制度について予定されていた質問内容をメール本文に張り付けて送ったという。実際のイベントでは同じ内容の質問が、言葉遣いもほとんど似た形でクリントン氏に向けられた。

ウィキリークスがこの件について暴露した数時間後、ブラジル委員長は「質問内容を知らなかったし、たとえ知っていたとしても候補たちに知らせるような真似は絶対にしない」と反論した。

CNNについては、トランプ氏が「クリントン・ニュース・ネットワーク」と嘲笑するなど、偏向を批判してきた。

ブラジル氏は前任のデビー・ワッサーマン・シュルツ委員長が、党幹部のメール漏洩で7月に辞任したのを機に、党委員長になった。シュルツ氏たち民主党幹部は、予備選で中立であるべきところを、サンダース氏よりクリントン氏をひいきしていたことが暴露された。

ブラジル氏は党副委員長だった今年1月の時点で、アフリカ系有権者により強力に働きかけようというサンダース陣営のメールを、クリントン陣営に「FYI(ご参考)」と転送している。クリントン陣営のエイドリアン・エルロド広報担当はこれに、「教えてくれてありがとう、ドナ」と返答ししたという。


司法省の「結託」

クリントン氏のブライアン・ファロン広報担当は2015年5月にメールで、「この件で今朝、審問があると司法省の連中が教えてくれた」と書いている。「この件」とは、クリントン氏の国務長官時代のメール公表を、記者が情報公開法にもとづき請求した件を指す。

司法省報道官だったファロン氏が伝達した情報は、すでに公表済みで複数の報道機関が報道していたもの。

しかしトランプ氏は、クリントン陣営と司法省が会話していたことをとらえて、「最大級の結託と腐敗だ」と非難した。


「難民を警戒」

クリントン氏が2013年にシカゴのユダヤ人団体に対して行った有料講演会の発言も漏洩された。クリントン氏は、ヨルダンとトルコが「難民全員を審査するのはとても無理です。なので、本当の難民と一緒にイスラム聖戦主義者が入り込んでいるかは、分からないんです」と話したという。

トランプ氏の支持者たちはこの発言をもって、米国は年間6万5000人の難民を受け入れるべきだというクリントン氏の主張を批判している。オバマ大統領は年間1万人の受け入れを計画している。

シリア難民の多くは、ヨルダンやトルコ、レバノンを経由して西側諸国を目指す。

トランプ氏はイスラム教徒の移民全員の入国を一時停止すべきと主張している。しかし現在では、その計画は「特定地域からの入国者は、特に厳しく審査するというものに形を変えてきた」と話している。


「国境開放」の夢

最近のクリントン氏は貿易協定に反対の立場を示しているが、2013年にブラジルのイタウ・ウニバンコ銀行に対して行った有料講演会では、逆の立場を示している。

クリントン氏は「私の夢は、半球全体の共通市場です。開かれた貿易と開かれた国境の。そしていつか将来、最高に環境に優しく持続可能なエネルギーが成長を促し、この半球の人全員が機会を得られるのが夢です」と述べていた。

反対勢力はこの発言を批判し、トランプ氏が繰り返すように「国境がなければ国はない」と指摘している。

クリントン氏は国務長官を退任後、合計2600万ドル(約27億円)以上の講演料を得たとされる。


キーストンXLパイプライン

「キーストンXLパイプライン」と呼ばれるカナダ~米国間の石油パイプライン敷設については、賛否両論が激しく飛び交い、クリントン陣営の側近たちも、クリントン氏がどう発言すべきかをメールで相談していたという。

2015年5月にはロビー・ムック選対本部長が、パイプライン計画関係者のひとりがクリントン財団に寄付していたと指摘。「環境派が今後、これを問題にするかもしれない。キーストンについていつ発言するか、もう相談したか?」と書いている。

ムック氏はさらに、オバマ大統領がパイプラインについて拒否権を発動するまで、クリントン氏は発言を控えた方がいいか質問している。オバマ氏は2015年11月にパイプライン敷設決定を拒否。クリントン氏は同年9月にパイプライン反対を表明した。

2010年の時点でパイプラインを承認すべきか質問されると、当時国務長官だったクリントン氏は、環境評価がまだ完了していないが、承認に「傾いている」と答えていた。

批判勢力はクリントン氏のその後の反対表明を、「二転三転」だと非難した。


チェルシー・クリントンは「甘やかされたガキ」

ビル・クリントン元米大統領の側近を長年務めたダグ・バンド氏は、自分のコンサルティング会社とクリントン財団での仕事に、チェルシー・クリントン氏が口出しをしてくると不満をメールに書いたという。バンド氏の会社に、元大統領は有給顧問として関わっている。

2011年のメールでバンド氏は、チェルシー氏について「まるでほかに何もすることがない、甘やかされたガキみたいだ。自分が何をしたいか、人生で何に集中するべきか見つけていないと自分でも言っていたが、自分の存在を正当化するためにもめ事を作り出すしか、ほかにやることがないんだ」と書いたという。

今年36歳のチェルシー氏は当時、クリントン財団で役職を得たばかりで、バンド氏のコンサルタント会社が英議会議員たちに「クリントン大統領の代理として」勝手に連絡をとっているとメールで不満をあらわにしていた。


「色々欲しがるラティーノと簡単な電話1本」

ポデスタ氏は上記の表題で201年8月、クリントン氏と、クリントン氏に最も近い側近のひとり、フマ・アベディン氏にメールを送ったという。

ポデスタ氏はこのメールで、予備選での支持を求めてニューメキシコ州のビル・リチャードソン前知事とフェデリコ・ペニャ元エネルギー長官に呼びかけたらどうかと提案している。

文中でポデスタ氏は、リチャードソン氏について不謹慎な表現で言及。リチャードソン氏はこれに先立ちメールで、支持してほしいなら電話するようにと示唆していたという。

(英語記事 Eleven revelations from Wikileaks' hacked Clinton emails

提供元:http://www.bbc.com/japanese/37675146

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