BBC News

2016年10月18日

米国防総省は17日、イラク主要都市モスルを過激派勢力のいわゆる「イスラム国」(IS)から奪還する作戦の進行状況は「予定より先に進んでいる」と述べた。

一方で、ピーター・クック国防総省報道官は、ISが「対抗して戦う」かどうかまだ分からないため、戦闘は「時間がかかるかもしれない」と慎重な姿勢を示した。

報道官はワシントンで記者団に対して、「イラク軍はこれまでに現段階での目的を達成したもようで、1日目の予定より先に進んでいる様子だ。イラク側の計画通りだが、まだ初期段階で、敵はこれから反応するわけだ。ISIL(ISの別称)が対抗して戦うかどうか、これから分かる」と述べた。

イラク政府軍、クルド人自治政府の治安部隊ペシュメルガ、イスラム教スンニ派の地元戦闘員など合計約3万人と、これを支援する米国主導の有志連合は16日未明に、奪還作成を開始した。モスルにはIS戦闘員が4000人~8000人残っているとみられている。

モスルは石油資源が豊富なニナワ県の県都で、イラク第2の都市。ISが2014年6月に制圧した。ISのバグダディ指導者は2014年7月に、モスルにおいて、イラクとシリアのIS支配地域にカリフ制イスラム国家を樹立すると宣言した。

それだけに、モスル奪還には「象徴的」な意味合いがあるとクック報道官は指摘した。

クルド人部隊は作戦開始から数時間の内に、複数の村を制圧。17日夜には、24時間以内に200平方キロの地帯と9の村を掌握するなど、主要目的をすべて達成したと発表した。加えて、イルビルーモスル間の道路のかなりの部分を抑えたという。

クルド人司令官のひとりはBBCのオルラ・ゲリン記者に対して、「敵は強力だ。相手はクルドやシーア派と戦っているだけではなく、世界全体と戦っている。すべての人のために連中を倒したい」と話した。

しかし戦闘がモスルに近づくに伴い、市内から出られずにいる市民の安全への懸念も高まっている。英政府のプリティ・パテル国際開発相は、市民保護は「最優先課題」だと指摘。「モスル奪還はイラクにおけるダーエシュ(ISの別称)を打倒し、モスル市民に対する強権独裁終結に向けて、重要な一歩となる。しかし、150万人がいまだに市内で暮らすなか、市民の保護と安全が最優先課題でなくてはならないのは明らかだ」と述べた。

国連によると、最大10万人のシリア市民がシリアやトルコに避難する可能性がある。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、イラク国内と隣国2カ国で避難する市民に、テントや毛布などを提供するため、追加6100万ドル(約64億円)が必要だと支援を求めている

イラク政府はこれまでにモスル市内に大量のビラを投下し、攻撃開始時にどう対応すべきか市民に呼びかけてきた。

クック米国防総省報道官は、「今後約48時間の間にさらに最大700万枚を投下し、戦闘中にどういう行動が最も安全か、モスル市民に教示する予定だと理解している」と述べた。

16日にモスルを空爆した有志連合には、英国軍の戦闘機も参加していたことがBBCの取材で分かった。

ファロン英国防相は、英空軍は作戦の準備段階からイラク軍を支援してきたし、今後もISとの戦いにおいて「主導的役割」を担っていくと述べた。

モスルはかつてイラクでも特に多様な人口構成の大都市で、イスラム教スンニ派のアラブ人、クルド人、アッシリア人、トルクメニスタン人のほか、様々な宗教少数派が暮らしていた。少数派のほとんどはISの進攻を前に逃れたが、多くのスンニ派アラブ人は当初、ISを歓迎していた。スンニ派は当初、イスラム教シーア派主導の現政権による宗教色を排除した政策への反発から、ISを支持していたが、2年間におよぶ残酷な独裁を経て、今ではかなりの反ISの機運がモスル市内でも高まっていると言われている。

他の都市ではIS掃討作戦に参加したシーア派民兵が、宗派対立からスンニ派市民に危害を加えた事例が報告されているだけに、今回のモスル奪還作戦開始を宣言したアバディ首相は、モスル市内に入るのは政府軍だけだと約束した。

(英語記事 Iraqi troops 'ahead of schedule' in Mosul battle against IS

提供元:http://www.bbc.com/japanese/37686957

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