世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年10月28日

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 米外交問題評議会のレイ・タキー上席研究員が、9月26日付ワシントン・ポスト紙に、「イランの次の最高指導者になりそうな人は西側の友人ではない」との論説を書き、イランの次の指導者と目されているイブラヒム・ライシの経歴などを紹介しています。論旨、次の通り。

最も反動的な人物

 

 イランが実利的になることへの最大の障害は最高指導者ハメネイであると言われてきた。核合意の有効性には期限があるが心配はいらない、なぜならハメネイの後継者は国際規範を尊重し、核兵器のために国際社会との統合を捨て去るとは思えない、と言われてきた。しかし、ハメネイと革命防衛隊が最高指導者になるように育てている人イブラヒム・ライシは、イランの支配エリートの中でも最も反動的な人物の一人である。

 ライシは56歳で、ハメネイ同様、マシュハード市出身である。神学校に行った後、彼は検事総長、一般監察当局の長、聖職者特別法廷(聖職者を公式見解から逸脱しないようにする機関)の検事など、法執行部門で働いた。彼は1988年、でっち上げの容疑で数千の政治犯を処刑した「死の委員会」の一員であった。

 最高指導者は尊敬される聖職者がなるものと考えられてきたが、ハメネイは宗教面では冴えない経歴しかなかった。それで、そうでもない人が最高指導者になる道を開いた。

 ライシの経歴は、反政府派弾圧を使命とする革命防衛隊の好みに合う。革命防衛隊の司令官は最近、イランの政権への脅威は外部の圧力より国内での反乱にあると述べた。ハメネイの理想的な後継者は革命防衛隊と同じ見方を持ち、治安・司法当局と緊密な関係を持つ人ということになる。革命防衛隊はそういう人としてライシを支持している。

ハメネイもライシを支持している。最近、イラン最大の慈善財団の長にライシを任命した。財団はマシュハード市のイマーム・レザー廟(毎年数百万が巡礼に来る)を運営し、多くの企業、広大な土地を持つ。財団の基金の価値は150億ドルともいわれている。この任命はライシを全国的に著名にするとともに、多くの資金を彼に与えた。

 ハメネイと革命防衛隊にとり、最重要問題は政権の生き残りではなく革命の価値である。彼らはイランを中国――イデオロギーを捨て、商業利益を重視した――にしないと決心している。2009年春の反乱は、いまや米では忘れられているが、イランの神政政治擁護者にとり分水嶺的出来事であった。ハメネイの下、イランは警察国家になった。その論理的帰結として、イランの抑圧機関からの人が最高指導者になろうとしている。

 正式には専門家会議が次の指導者を選ぶが、現実には決定は今裏で行われている。ロウハニ大統領は穏健政権への希望であるが、この権力劇には関係がない。ハメネイなどは、次の指導者は不安な時期に権力の座につくと考えている。この指導者は西側への軽蔑心を持ち、政権のために流血もいとわない人であるべきである。神政政治の抑圧を信じるとともに、その機構の一部であったライシほどそういう属性を持つ人はいない。

出典:Ray Takeyh ‘Iran’s likely next supreme leader is no friend of the West’(Washington Post, September 26, 2016)
https://www.washingtonpost.com/opinions/global-opinions/irans-likely-next-supreme-leader-is-no-friend-of-the-west/2016/09/26/eb3becc0-79fb-11e6-bd86-b7bbd53d2b5d_story.html 

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