BBC News

2016年10月24日

米通信大手AT&Tが米メディア大手タイム・ワーナーを買収すると両社が合意したことを受け、米連邦議会議員や大統領選の民主・共和両党候補が疑念を示している。

ケーブル業界でも全米3位のAT&Tは、CNNやHBOなどのケーブル局を所有するタイム・ワーナーを854億ドル(約8兆8600億円)で買収することになった。

上院の反トラスト小委員会は11月に公聴会を開く予定。小委員会のマイク・リー委員長(共和党)は、買収が「反トラスト上かなりの問題が生じる可能性があるため、小委員会は慎重に検討する」と述べた。

しかし、AT&Tのランダル・スティーブンソン最高経営責任者(CEO)は、認可は得られるだろうと見通しを示している。

今年これまで発表された最大の合併案件では、1億3000万件の携帯電話契約や2500万人件の有料ケーブル契約を擁するAT&Tの配信ネットワークに、映画制作などを手掛けるワーナー・ブラザースをはじめ、CNNやカートゥーン・ネットワーク、HBOなどのケーブル局のコンテンツが加わることになる。

料金の引き上げや消費者の選択肢の減少が、競争に関する主な懸念点だ。

民主党候補ヒラリー・クリントン氏の選対広報担当者は、合併について規制当局が精査すべき「多くの疑問や懸念」があると指摘したが、「結論を出す前に、公表すべき情報がまだたくさんある」と語った。

一方、共和党候補ドナルド・トランプ氏は、「あまりに少数の人に権力が集中しすぎる」として、合併を阻止する考えを示した。

大統領には合併の可否について最終的な判断を下す権限はない。司法省が合併を審査し、認可するかどうかを決めたり、認可の条件となる点を提示したりする。

市民が安価にメディア情報を得る機会拡大を推進する非営利団体パブリック・ナレッジのジョン・バーグメイヤー氏は、合併で消費者が損をする可能性があると語る。AT&Tの顧客がデータ制限なしにタイム・ワーナーのコンテンツを視聴できるようになると、ほかのプロバイダーの動画サービスの魅力が低減するという。

しかし、AT&TのスティーブンソンCEOは、「2社の合併で競争上の損害が生じることはないので、規制当局の懸念は合併条件で十分対応できると考えている」と語った。

AT&Tの動機

法律事務所ハントン・アンド・ウィリアムズのワシントン支社で競争政策を専門とするアマンダ・ウェイト氏は、事態はそれほど単純ではないと指摘する。

ウェイト氏はBBCのラジオ番組「ワールド・ビジネス・リポート」で、「米国の反トラスト部門は、合併によってAT&Tのビジネス上の動機がどう変化するのか詳しく検討する必要がある。とても複雑な問題だ」と述べた。

主な問題は2つだとウェイト氏は言う。まず、合併によってAT&Tに、テレビ番組「ゲーム・オブ・スローンズ」を他のケーブル会社で放映できないようにする動機が生じるかどうか。また、AT&Tが自社通信網の使用で自社コンテンツを優先するかどうかだ。

ウェイト氏は、「AT&TはHBOなどタイム・ワーナーのチャンネルをより目立つようにし、さまざまな通信サービスでより簡単に視聴できるようにする一方、同社通信網を使う他社チャンネルを不利にしたり、見せないようにすることさえできるのだろうか」と疑問を呈した。


<解説>ジョー・ライナム特派員

AT&Tは多くの米国人に、娯楽消費の手段を提供してきた。ケーブルであれブロードバンドであれ、消費者がお気に入りの番組を視聴ためのプラットフォームを所有している。

しかし、「ゲーム・オブ・スローンズ」やCNN、米プロバスケットボールNBAの試合生放送といった、消費者が見たい番組や「コンテンツ」を持っていなかった。これまでは。

タイム・ワーナー(タイム・ワーナー・ケーブルとは別会社)を傘下に収めることで、AT&Tはメディア関連サービスの完全なラインアップを備えた、世界有数の企業になる。

合併によってAT&Tは、競争の激しい米国市場でベライゾンやコムキャストといった企業群から一気に頭一つ抜け出すことになる。

しかし、合併が実現しない可能性もある。AT&Tはすでに携帯電話、ブロードバンド、ケーブルテレビ網を持っている。その上で番組も支配すできるようになるとすれば、消費者の選択肢が奪われるとして、規制当局に反競争的だと判断されるかもしれない。

(英語記事 US to examine AT&T deal to buy Time Warner

提供元:http://www.bbc.com/japanese/37748448

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