WEDGE REPORT

2016年10月28日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。1972年共同通信社に入社、経済分野を取材し編集委員などを経て2010年に退職し、現在は経済ジャーナリスト。

 大地震、巨大台風などこれまでの経験ではとらえられないような異常気象の多発を受けて、法人から個人の健康管理にまで気象情報を新しいビジネスに展開しようという動きが広がってきている。民間の気象情報提供会社のウェザーニューズ(WNI)によると、本来業務である天気予報の情報提供だけに留まらず、海外で試合を行うオリンピック選手への試合に勝利するための気象情報サポートを開始し、来年1月頃には海運会社への北極海の氷の情報提供を始める。また同業のライフビジネスウェザーは、気象情報に顧客行動などの情報を加えたものをビッグデータとして加工処理して、買い物客の購買意欲を指数化したデータを提供するなど、少しでも売り上げ増加に役立てようとしている。

ラグビーで大きな成果

雨の日はスローイングが短いプレーを選択する

 WNIはスポーツ分野での情報提供として、夏の高校野球など運営団体へは20年以上前から行ってきた。だが、選手やチームへの情報提供は、ラグビーから始まった。提供先が運営団体と選手とではサポート内容が全く異なり、選手の方はパフォーマンスを上げるため、コンディションを最高に持っていけるよう緻密で細かい時間単位の情報が必要になるという。

 日本ラグビーフットボール協会で日本代表チームの分析を長年担当している中島正太さんは「日本代表チームの監督にエディ・ジョーンズ氏が就任した2012年4月から、これまで以上にデータを重視するようになり、気象データも活用するようになった」と話す。その成果を証明したのが、15年9月15日に英国で開催されたラグビーワールドカップ(W杯)。日本は初戦に優勝候補の南アフリカを試合終了間際の逆転トライにより「34-32」で破る「ラグビー史上最大の番狂わせ」を起こした。

 この試合に向けて、WNIは一週間前から日本代表チームに対して正確な気象予報を提供し続けた。ラグビーは試合当日が雨か晴れか、風の強さや向きによりキックを使うか、パスでボールをつなぐかなど、戦い方が大きく異なる。試合時間帯の気象条件が予め分かれば、練習では天候に応じた戦術に絞ることができ、スタッドの長いスパイクを着用し、ボールを石鹸水で濡らし、手が滑りやすい状況に対応できるよう、練習することもできる。

 代表チームは10日ほど前に試合会場となるブライトンに入ったが、低気圧の影響で荒天が続いていた。しかし、南アフリカ戦の試合時間帯の予報は「晴れ」で、雨の心配はなかった。このおかげで、選手たちは雨対策を考えなくてよく、心理的に不安に感じることもなく、試合に集中できた。また現地は海が近く、風が強く風向きの変化も大きかったが、WNIはスタジアム内では「風の影響が少ない」と分析し、的中させた。 

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