2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年11月2日

 メイ首相はEU離脱に向けて今後の作業と展望を示す演説を行いましたが、10月2日付の英フィナンシャル・タイムズ紙が、これを評価する社説を掲げています。要旨は次の通りです。

 10月1日、保守党大会の演説でメイ首相はEU離脱の引き金となる条約50条の発動を来年3月末までに行うことを言明した。ビジネス界が先行きが明らかになることを希望していることを考慮すれば、条約50条を発動するタイミングは理解できるものである。離脱プロセスを何時までも引っ張るわけにはいかない。政府には離脱の決定に何の準備もなかったが、過去数週間を賢明に使い、静かにその立場を整えてきた。

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英国はノルウェーにもスイスにもならない

 フランスとドイツで選挙が予定されていることから離脱プロセスの開始を来年秋まで遅らせるよう求める意見もあったが、メイ首相は賢明にもこれを退けた。Brexit開始の理想的なタイミングといったものはないのであり、また進路の変更は首相のスタイルでもなかった。

 しかし、条約50条の発動はBrexitの特定の解釈に政府をコミットさせるものではない。この点については、メイの演説は多くのオプションを残している。他方、メイは彼女が欲する取り引きの大筋は明らかにした。英国はノルウェーにもスイスにもならない。EUの規則は消滅するが、「全ての人々」のための英国というビジョンに従い、雇用に係る諸権利を焼き捨てることはしないと。

 また、メイは英国は単一市場にとどまることはないことを強く暗示した。移民のコントロールの必要性と欧州司法裁判所の管轄権を終わらせることを強調したが、これは英国が明確な決別を追求する合図である。国民投票の結果に鑑み、政治的にこれは避け難いように見える。しかし、経済的インパクトという重要な問題が残っている。単一市場を排除しているようでありながら、他方で関税同盟にとどまるかどうかについては何も言っていない。この方が日産やBMWのような投資家にとってはより大きな問題である。メイがWTOのみに頼ることに特段の熱意を示さなかったことも注目される。

 人の移動の自由を維持したままの解決を主張することはメイにはできない。しかし、英国をどこに導くかによって、彼女は評価されることになろう。

出 典:Financial Times ‘Theresa May is right to offer clarity on Brexit timetable’
(October 10, 2016)
http://www.ft.com/cms/s/0/9968043e-88c3-11e6-8aa5-f79f5696c731.html?siteedition=intl#axzz4M4tXQlcm


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