WEDGE REPORT

2016年10月31日

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 「農業競争力強化法」に関連した先行事例がある。全農の子会社であるコープケミカルと丸紅系肥料メーカーの片倉チッカリンが、15年10月に合併したことだ。これで国内最大の肥料メーカーである片倉コープアグリが誕生。これは、全農系列、商社系列の垣根を取り払っての企業合併だった点に着目すべきだ。それも生産資材だけでなく、農産物流通など農業関連産業全般をカバーする。『農業競争力強化法』は、農水省が初めて手をつける産業政策だ。

浮き彫りになってきた農協内の〝温度差〟

 5兆円近い全農の取扱高は、総合商社4位の三井物産とほぼ同じ事業規模。それでいて上場企業並みのディスクロージャー(経営内容の公開)を拒んできた。「農業競争力強化法」は、全農系列の企業やメーカーを巻き込んだ業界再編を後押しするだけに、親会社たる全農の企業並みのディスクロージャーが前提になる。従って、株式会社化は不可避という結論にある。

 独占禁止法の適用除外という既得権も株式会社化で失う。だが、全農経営陣が競争モードに経営方針を切り替えれば、その効果は計り知れないものがある。すぐに思いつくのは、農協を通じて農家に提供する商品やサービスの価格の引き下げだ。これにより農協だけでなく農家の信頼も勝ち得て、総合商社並みの収益を確保する道も開けてくるのだ。

 また、優遇税制の特権も失うが、株式会社として自由に活動できることを考えれば、あまりあるものになるはずだ。

全農は共同組合から株式会社になると「既得権」が剥がされる (出所・各種資料をもとに筆者作成)
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