世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年11月4日

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 フィナンシャル・タイムズ紙が「トルコの反対派弾圧は行き過ぎている。エルドアンはすべての敵をなくすために非常事態統治を使っている」との社説を10月5日付で掲載し、エルドアン大統領を批判しています。社説の論旨、次の通り。

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非常事態の無期限延期案

 トルコの大統領が非常事態を無期限延長もありうるとの脅し付きで3カ月延長したのは驚くべきことではない。エルドアンのようにわがまま、権威主義的な人にとり、憲法裁判所を含む国家機関を迂回する機会は常に魅力的であった。

 しかし7月のクーデタ失敗後、彼が行っている粛清の深さと規模は懸念を呼ぶ。政府はギュレン師(イスラム主義者で、かつての公正発展党AKPの同志)の軍及び諸機関における弟子がクーデタを起こしたとしている。

 判事、軍将校を含む10万人以上の公務員がギュレン師との関係ありとして既に解雇、停職、拘留されている。10月4日には1万3000人の警察官が粛清対象になった。

 クーデタの試みの際、実行者は首都で爆撃をし、市民240名が死んだ。この暴力は非常事態導入を正当化する。またいかなる政府もギュレン師のネットワークが達成したと思われる国家機関への浸透を許せないだろう。

 米国もEUも、クーデタを非難するうえで、残念ながら遅すぎた。それでトルコへの影響力を失った。しかしエルドアンが仏もテロ事件後非常事態を導入した、フランスに許されることがトルコに許されないことはない、との言い分は説得力がない。

 第1に、エルドアン自身、ギュレン派の台頭を容易にした責任がある。軍、世俗主義者との戦いにおいて、エルドアンはギュレン運動を同盟者にしていた。

 最も問題なのは、エルドアンはクーデタ事件をギュレン派だけではなく、他の反対派も弾圧する口実にしている証拠がある。クーデタに反対するなかで出てきた国民的コンセンサスに基づく国造りの機会を無にしてしまっている。トルコ社会を弱め、治安部隊を含む国家機関を弱めている。ジハード主義者やいくつかの武装反対者に直面している国にとりこれは危険な動きである。S&P社は先週トルコの債務の格付けをジャンク債に格下げした。

 トルコ経済はAKP勝利後、エルドアンの施政下の寛容な時期に活性化した。再度、そうできる。しかし政府が法の支配を尊重した場合のみ、和解や国家再建ができ、法を守る諸国の仲間として歓迎されるだろう。

 現在の弾圧は法の支配の尊重ではない。ハンガリーのような不完全なEU国と比較しても、EU加盟候補国、エルドアンのトルコは民主主義を逸脱している。

出典:‘Turkey’s crackdown on dissent has gone too far’(Financial Timese, October 5, 2016)
https://www.ft.com/content/269f0b22-8a27-11e6-8aa5-f79f5696c731

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