WEDGE REPORT

2016年11月3日

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土方細秩子 (ひじかた・さちこ)

ジャーナリスト

ボストン大学コミュニケーション学部修士課程終了、パリ、ロサンゼルスでテレビ番組製作に携わり、1993年より米国でフリーランスのジャーナリスト活動を行う。

 AIは今や企業にとって「顧客サービスを行う上でなくてはならない存在」になりつつある。銀行業界でそれを真っ先に導入しているのがバンク・オブ・アメリカ・メリル・リンチ(BofAML)だ。10月19、20日の両日に開催した技術革新サミット(カリフォルニア州メンロパーク)で、カスタマー・リレーションのインターフェイスとしてのAI導入などを発表。2016年、BofAMLはデジタル予算を昨年比で3倍とし、この分野での銀行業界トップを目指している。

 全米第2位、4700万人の個人、中小企業顧客を抱える銀行にとって、AI導入とはどのような意味を持つのか。同社のCTOデビッド・ライリー氏はサミットでの演説で「顧客に競争力のあるオンライン及びモバイルサービスを提供するために、企業のインフラを変革させなければならない、という点は伝統的企業においては低く評価されすぎている面がある」と語った。BofAMLでは「ソフトウェアを軸にしたインフラ」と名付けてプライベート・クラウドによる顧客サービスの充実を図っている。

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自社開発に乗り出す

 ライリー氏は「他社が提供するクラウドやハイブリッドサービス(ここで言うクラウドとは単なる情報のストレージではなく、インターフェースにAIを採用し、情報の出し入れを顧客の好みに合わせて自動的に行う総合的なサービスを意味する)には、我々が求めている内容のものがなかった」と自社でプライベート・クラウド開発に乗り出した背景を説明する。現在同社はクラウド関連のみで3万3000人を雇用しており、2019年にはさらに2000人の増員を目指している、という。自社でクラウドを構築するメリットには、自社が望むスペックを入れられることの他、コスト面での節約もある。同社がネットワーク、ストレージ、サーバーなどに費やすコストは、他社に運営を任せていた2012年当時と比べて年間11億ドルも低くなっている、という。

 BofAMLのIT技術の一つの成果として発表されたのが、パーソナル・ボイス・チャット・アシスタント、「エリカ」だ。エリカは同社のモバイル・アプリケーションに組み込まれ、顧客は音声ガイドによって望むサービス(預金の預け替え、残高チェック、小切手のオーダーなどのあらゆる銀行業務サービス)にスマホ経由でアクセスできる。

 また近いうちにリリースが予定されているのは「メリル・エッジ・ガイデッド・インベスティング・プラットホーム」で、個人のニーズに合わせた投資ガイドラインを「ロボ・アドバイザー」ツールが提供、また個人的に投資バンカーのアシストを希望する場合はチャットなどを通して「人間」との会話もできる、というツールだ。

 銀行の窓口業務にもITは活かされている。例えばクレジットカードを申請する場合、従来ならば銀行に出向いて様々な用紙に署名、収入証明などを出す必要があったが、現在ではスマホへのメールでこうした所定用紙へのリンクが送られ、そこをクリックして「承諾」のメールを返すのみとなった、など時間も作業も短縮されている。

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