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2016年11月2日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。1972年共同通信社に入社、経済分野を取材し編集委員などを経て2010年に退職し、現在は経済ジャーナリスト。

 羽田発ニューヨーク便をめぐって全日空(ANA)と日本航空(JAL)が火花を散らしている。ANAは10月30日から羽田を午前10時20分に出発してニューヨークに午前9時に到着する直行便をスタートさせたが、JALは成田からの便(午前10時50分発と午後6時25分発の2便)しかない。ANAのニューヨーク便に乗れば、到着してその日をフルに動ける便利さはビジネスマンにとって何物にも代えがたい。ビジネス客の多いこの路線は、今後は使い勝っての良いANAになびくことが予想される。JALとしてはANAの羽田発ニューヨーク便に指をくわえてみているわけにはいかない。

羽田と成田の運賃差は小さい

iStock

 ANAは羽田発のニューヨーク、シカゴ便就航を記念してキャンペーンを開始している。ちなみに成田発と羽田発のニューヨーク便の運賃がどうなのかをANAに聞いてみた。エコノミークラスで数千円、ビジネスクラスで1~2万円しか差がない。これだけの金額差しかないのなら、多くの利用客は遠くてアクセスに時間とお金のかかる成田から乗りたい気分にはならないだろう。ビジネス客の何割かは価格の高いビジネスクラスに乗ってくれるため、羽田発の同路線はこれまでの成田発と比べてビジネスクラスの乗客が増えるのではないかともみられている。

 東京発のニューヨーク便はビジネス客が多く、航空各社にとってはドル箱路線。ニューヨークは日本人観光客が毎年30万人以上やってくる、最も行ってみたい観光スポットだ。このため航空各社は、アクセスの良い羽田発のニューヨーク便は、喉から手が出るほどほしかった路線で、日米の航空交渉と羽田空港の発着枠の増大などによってやっと実現した。しかし、ANAのライバルであるJALとしては、羽田発の同路線がANAだけに認められたのは来年3月末までは我慢できるとしても、国土交通省に対して来年4月以降に同便を認めるよう働きかける。

「8・10ペーパー」

 ANAとJALの路線獲得競争には因縁の背景がある。JALは、6年前の2010年1月に放漫経営がたたって経営破たんし会社更生法を申請した。公的資金が投入され、社員の賃金がANAの8割にまで抑制されるなど、航空事業は厳しく抑制されていた。京セラの創業者だった稲盛和夫氏がJALの会長に就任して再建に采配を振るったこともあって経営再建は順調に進み、12年9月には東京証券取引所に再上場するまでこぎつけた。しかし、JALは公的資金も投入された管理会社ということで、来年3月までは国交省の監督下に置かれ、新規ビジネス、新規航空路線は認めないという「8・10ペーパー」と呼ばれる取り決めの存在があった。

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