2024年4月25日(木)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2010年3月11日

 第一には、「達成しやすい相手頼み」という、易きに流れた結果である。そしてこれが第二の背景に繋がるのだが、日本の「中国頼み」は中国側の思惑と合致しているのだ。

 人口13億人超の中国にとっては、受け入れ側の日本さえOKならいくらでも人を送りこむ用意はある。ここで詳しい言及は避けるが、労働、留学、観光旅行、商用をいった目的を問わず、世界中に一人でも多くの「中国人」を送り出すことは中国の国策のひとつといってもいい。現実に日本に限らず、または先進国に限らず、はたまた「純粋な観光客」に限らず、世界中が「押し寄せる中国人」を受け入れつつも、頭を悩ませてもいる。

 一時逗留の観光客であっても、多くの自国民を送り込み、そこでの経済活動に関与するということは、相手国への影響力を強める近道にほかならない。こうした中国側の思惑の実行部隊よろしく動く、日本の与野党の「親中派」なる政治家の存在が、「中国人頼み」の日本の「国策」の方向付けを容易くしている。外国人留学生政策然り、最近では自民党議員有志がぶち上げた「1000万人移民受け入れ構想」なども然りである。

 第三の背景には、日本のメディアが喧伝する、中国人観光客の目立つ「金遣い」にある。1回の旅行で中国人観光客が使う金額は平均30万円との報道もあった。多い人は数百万を使い、それは珍しくないとも伝えられた。こうした現象をもって、「外貨獲得という国益のためにはじゃんじゃんお金を使う中国人獲得だ!」との理屈が存在感を増し、その行き着いた先が観光庁の「中国人6倍増計画」である。

そうは言ってもかつては日本人も……

 ただ、この「金遣い」に一種のノスタルジーを感じるのは私だけだろうか?

 ほんの10年と少し前、われわれ日本人がまさに欧米各国で「1回の旅行で数十万」の札ビラを切っていたのではなかったか。私自身も含め、かつて周囲には年1~2回の海外旅行で月給以上の支出をしていた人はざらにいた。ハワイや香港で、大きなボストンバッグ一杯、化粧品を買い込んだために、帰国後の日本の税関で止められているOLさんや、フランス、イタリアの高級ブランドのブティックが日本人客だらけ、という現象も年中のことで珍しくなかった。

 当時の欧米の店側が、表向きは「日本人歓迎」の態度を見せ、片言の日本語での接客などに勤しみながら、その実「ブランドの価値も分からずやたらと札ビラを切る日本人」を小馬鹿にしていたような雰囲気があったことも今となれば懐かしい。

日本の「当たり前」に感動する中国人

 少々否定的なニュアンスで書き出したので誤解があってはいけないが、中国人だろうが、どこの国の人だろうが、きちんとルールを守って滞在する観光客にじゃんじゃんお金を落としてもらえるよう、彼らに向けた商売に精を出すことには私は大賛成だ。

 私自身、中国人の親しい友人を視察などの商用で招聘した経験も少なくなく、彼らを観光やショッピングに案内した経験も少なくない。そんな折には、じゃんじゃんお金を落としてもらうよう「煽った」こともある。こうした経験からいうと、彼らの金遣いは確かに豪快で、日本製高級化粧品など値段も見ずに「はい、このクリーム5個、こちらの美容液10個」などといって店員を慌てさせることもしばしばだ。

 さらに、いわゆる中国のエリート、富裕層に属する彼らは「日本の素晴らしさ」に少なからず感動を覚えてもいる。それは、われわれ日本人が見過ごしがちなことだが、田舎でも裏路地でも清潔で整頓されている、小さなものを一個買っただけでも丁寧にお辞儀してくれるといった、日本人にとっては当たり前の日常風景に感嘆するのだ。これらの現象を総括して彼らは「日本には格差がない」と口を揃える。


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