オトナの教養 週末の一冊

2016年11月4日

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本多カツヒロ (ほんだ・かつひろ)

ライター

1977年横浜生まれ。2009年よりフリーランスライターとして活動。政治、経済から社会問題まで幅広くカバーし、主に研究者や学者などのインタビュー記事を執筆。現在、日刊サイゾーなどに執筆中。ブログ:http://golazo-sala.cocolog-nifty.com/pinga/

――先程の話にも出ましたが、手紙の大半が、オバマへの謝罪にこだわらないという内容だったのには驚きました。これはどう分析されますか?

三山:1つには、戦後70年が経過し、今更恨み辛みを言うよりも、謝罪にこだわらず大統領を招くことでもう一度核軍縮のメッセージを世界に向けて発信して欲しいという現実的な対応もあったでしょう。

 また、実は終戦から2年後に小中学生から市民を対象に募集した「原爆体験と感想記」でも164人の手紙のうち、アメリカへの怒りではなく、6割が「平和」を求めていました。検閲を受けたものだと思われるかもしれませんが、調べたところそのような事実はなかったようです。

 また、広島が軍都だったことも影響しているのではないかと思いますね。戦時中、沖縄が陥落すればアメリカ軍が本土の西や南から上陸してくることが予想されたので、東京に第1司令部、広島に西日本司令部が設置されました。

 当時の広島では軍人が大きな顔をして闊歩していたそうです。広島県原爆被害者団体協議会の坪井直理事長は、被爆直後、息も絶え絶えに橋のたもとにうずくまっていると、日本陸軍のトラックが来て、救護もせずに戦争に使える若い男だけを連れて行ったというエピソードを語っています。怒りの対象が日本軍に向いているのが注目されます。

 一方のアメリカ軍を含めたGHQは、広島に小麦粉を重点的に配分し、それが現在の広島お好み焼きにつながっています。彼らに贖罪意識があったかどうかはわかりませんが、ヒロシマは気にはなっていたんだと思います。

 そうした日本軍に対する嫌悪感と、原爆を投下したアメリカへの思いが、長い年月を経る中で謝罪にこだわらないという内容につながっているのかなと思います。

――一方のアメリカ側は、広島に特別な感情を抱いているのでしょうか?

三山:アメリカ人の広島に対する思いはわかりにくい。アメリカの世論調査では「原爆投下は戦争終結を早めた」と思っている人は今でも半数はいます。ただ「原爆投下を正当化するか」となると、若い世代は疑問視する人が大勢です。一方、興味深いデータがあります。観光庁の調査の外国人旅行者の都道府県別宿泊者数のデータによれば、ほとんどの都道府県で中国人がトップなのに対し、広島だけはアメリカ人がトップなんです。広島への飛行機の直行便がアメリカからないにもかかわらずです。

 オバマが訪問したからと思われるかもしれませんが、このデータはその前年のもので、オバマの影響はありません。

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