中東を読み解く

2016年11月4日

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暗殺の情報収集に躍起

 イラク軍や米軍は無理をせずに障害を1つずつつぶして進撃を続ける方針だが、ISは最終的には市を分断しているチグリス川の東側を放棄し、市の中心部である川の西側に立てこもるのではないかと見られている。西側は通りが狭く、戦車などの通行を阻止しやすいからだ。

 しかも国連によると、ISは「人間の盾」に使うため撤退したモスル周辺の村々から数万人の住民を強制的にモスル市内に移動させた恐れがある。「人間の盾」として米軍などに空爆させないよう使うためと見られている。モスルにはなお約150万人に上る住民がとどまっているとされ、米軍は住民の死傷者をいかに最小限にするか苦慮している。

 米軍はIS戦闘員の抵抗と士気を削ぎ、早期奪還を成し遂げるため、指導者バグダディの拉致・暗殺を大きな目標に掲げている。その任務は主に、イラクに駐留している約6000人の米軍部隊の中で、北部クルド自治区のアルビルに拠点を置く300人規模の特殊部隊に委ねられている。

 この目標達成には、バグダディの居場所の特定が不可欠だ。このためモスルのIS有力幹部の拘束も検討中。また戦死したIS戦闘員の所持していた携帯電話や所持品に手掛かりがないか、徹底的に調べている。バグダディの潜伏先はISでも一握りの側近しか知らないトップ・シークレット。これまでの情報では、バグダディはモスルやシリアのISの首都ラッカなどを転々とし、同じ場所に長時間とどまらないようにしていることが分かっている。

 米軍はISの通信や携帯電話の会話を24時間態勢で傍受しており、バグダディは命令や指示に当たっては携帯電話などを使わず、クーリエ(運び屋)を使って伝達しているようだ。モスル奪還の戦闘激化で、極秘に続けられてきたバグダディの拉致・暗殺作戦も一気に強化されてきた。

  
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