2024年4月20日(土)

ベストセラーで読むアメリカ

2010年3月17日

 さて、エドワーズの奥さんといえば、本コーナーで昨年夏、「被爆を知る幻のファーストレディー」でとりあげた、エリザベス・エドワーズだ。息子を交通事故で亡くし、自らもガンを患いながらも、政治家の夫を支える悲劇のヒロインとして全米で絶大な人気を誇る女性だ。しかし、その実態は「気の違った女性だ」と本書は以下のように切り捨てる。

 The nearly universal assessment among them was that there was no one on the national stage for whom the disparity between public image and private reality was vaster or more disturbing. What the world saw in Elizabeth: a valiant, determined, heroic everywoman. What the Edwards insiders saw: an abusive, intrusive, paranoid, condescending crazywoman.
  With her husband, she could be intensely affectionate or brutally dismissive. At times subtly, at times blatantly, she was forever letting John know she regarded him as her intellectual inferior. The daughter of a navy pilot, Elizabeth had lived in Japan when she was a girl and considered herself worldly. She called her spouse a “hick” in front of other people and derided his parents as rednecks. One time, when a friend asked if John ha d read a particular book, Elizabeth burst out laughing. “Oh, he doesn’t read books,” she said. “I’m the one who reads books.” (p127)

 「エドワーズの取り巻きの間でのほぼ共通したエリザベスに対する評価は、全国的な著名人で、世間的なイメージと現実の姿の違いがこれほど大きく、ひどい人は他にはいない、というものだ。世間はエリザベスのことを、勇敢で意思が強く、英雄的な普通の婦人とみている。しかし、エドワーズの取り巻きたちは、口汚く、でしゃばりで、偏執病的な、相手を見下す気が違った婦人とみている。
  夫(ジョン・エドワーズ)と一緒にいるときは、とてもやさしいか、あからさまに尊大かのどちらかになる。あるときはそれとなく、あるときは露骨に、夫に対し自分の方が知的に優れていることを絶え間なく誇示し続ける。父が空軍のパイロットだったことから、エリザベスは子どものころ日本に住んだことがあり、世間を知っていると自分で思っている。他の人がいる前で、夫のことを田舎モノと呼んだり、夫の両親のことを南部の貧乏百姓とばかにしたりしたこともある。ある時、友人がジョン・エドワーズに、ある本について質問した時、エリザベスは突然、笑い出した。『夫は本なんて読みません』とエリザベスは言った。『本を読むのは私の方です』と」

 共和党の大統領候補としてオバマ陣営と対決した、マケイン大統領候補の陣営の不協和音も描く。選挙戦の半ばに、リーマン・ブラザーズ破綻など金融危機が深まったにもかかわらず、適切な対応をとれないマケイン。さらに、話題性だけを狙って拙速に、アラスカ州知事(当時)のサラ・ペイリンを副大統領候補に指名したことが裏目に出るなど、ちぐはぐな選挙戦が続く。

ペイリンの驚きの無能ぶり

 ペイリンといえば、本コーナーで昨年暮れに「オバマの次はペイリン!?」で、ベストセラーとなった自伝を紹介した。自著では、マケインの選挙対策本部の参謀たちを批判していたが、本書はペイリンの無能ぶりを赤裸々に描いている。ペイリンがアラスカ州アンカレジに飛行機で向かう直前、現地でのテレビインタビュー収録に備えて、選挙対策チームが事前の打ち合わせをした際の状況について次のように記す。


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