前向きに読み解く経済の裏側

2016年11月14日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

久留米大学商学部教授

1981年、東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。主に調査関連部署に勤務した後、2005年に銀行を退行して久留米大学へ。著書に『増補改訂 よくわかる日本経済入門』(朝日新書)、『老後破産しないためのお金の教科書』(東洋経済新報社)、『世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書』(宝島社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)など多数。

 ネットオークションの買い手が、「売り手が詐欺師だったらどうしよう」と考えたら、オークションが成立しません。売り手は自分が正直であることを知っていても、買い手にそれを知らせるのは意外と大変なので、売りたいものも売れないのです。このように、当事者の一方が知っている情報を他方が知らない場合、正直者が損をする可能性があります。「情報の非対称性」がもたらす問題です。今回は、こうした可能性について考えてみましょう。

ネットオークションは、売り手の評判が買い手に見える仕組みが重要

iStock

 ネットオークションの場合には、正直な売り手は「商品を受け取ってから代金をお支払いください」と言うことで、自分の正直さを相手にアピール出来ます。しかし、今度は買い手が嘘つきで、代金を払ってこない可能性が出て来ます。今度は買い手が売り手に自分の正直を信じてもらうのが大変です。

 そこで、多くのネットオークション会社は、売り手ごとに、過去の買い手から評判を聞いて、ランク付けをしているようです。そうすれば、1度は偽物を売り付けることが出来ても、2度目からは買い手がつかなくなりますから、市場から排除されていき、正直者だけが残って市場で取引することになるでしょう。問題は、正直者が始めて出品する時に、どうやって買い手を信じさせるか、ということですね。それについては、売り手を直接知っている人に買い手になってもらい、評判を書き込んでもらう、といった工夫が必要かもしれません。

中古車のように一度限りの取引だと、仲介者の関与が必要になる

 中古車の性能は、売り手は知っていますが、買い手にはわかりません。たとえば買い手が「中程度の性能の中古車に相応しい値段」の売り物を物色するとします。しかし、その価格帯には「上性能の中古車」はありません。中性能と低性能の中古車が入り交じっています。

 ということは、運が良ければ値段通りの性能の中古車が手に入りますが、運が悪いと値段に見合わない低性能車が来てしまいます。それでは買う気になりません。そこで、物色の価格帯を「中性能車と低性能車の適正価格の平均」にまで下げることにします。そうすると、そこには中性能車は並んでいないので、低性能車だけが並んでいることになります。それなら「低性能車に相応しい価格で低性能車を買う」しかありませんね。

 これは、買い手にとっても正直な売り手にとっても大変困った状況です。しかし、当事者がこの問題を解決するのは容易ではありません。そこで、仲介業者の出番となります。

 プロの仲介業者が十分に性能をチェックして、正当な価格で買い取り、それを売りに出せば良いのです。買い手は、プロの仲介業者なら信用するでしょう。それは、一般人の売り手と異なり、プロの仲介業者は明日からも取引を続けていく必要があるため、嘘をついて評判を落とすわけに行かないからです。

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