2024年4月19日(金)

安保激変

2016年11月12日

――2017年2月にはトランプ政権が発足しますが、日本へはどのような影響が考えられますか?

小谷:まず、経済面では既に市場も反応しています。日本と貿易戦争でもするかのような発言もあり、アベノミクスとはベクトルが逆なので、日本経済の再生にとってはあまり良い影響はないかもしれません。TPPについても強く反対していますので、先行きは不透明です。

 安倍晋三首相とトランプ氏の会談が今月17日、ニューヨークで行われることが決まりました。そこで取り上げるべき重要事項は2つあり、一つはこのTPPについて本当はどう考えているのかということ、もう一つは日米同盟についてです。

 トランプ氏のこれまでの発言を見る限り、日米同盟についての理解が乏しいことは間違いありません。彼は同盟を経済的な観点からしか見ておらず、「アメリカがこれだけ投資をしているのに見返りがない」と考えています。同盟は投資ではなく「保険」です。掛け捨てかもしれませんが、いざという時に役に立ちます。お互いにとって国益を守るための「保険」という概念であれば、ビジネスをしてきた彼もロジックとして受け入れやすいと思うので、政権が発足する前からきちんと発信していくべきでしょう。

――在日米軍駐留経費についても、日本に全額負担を求めています。

小谷:実は、駐留経費はそこまで高いわけではありません。定義によって数学は多少変わってきますが、おそらく総額5000億円程度だと思います。これは日本の防衛予算全体の約10分の1の額です。現在「ホストネーションサポート」という形で日本は在日米軍駐留経費を年間2000億円支払っています。これにプラス3000億円ならば、捻出しようと思えばできない額ではないと思います。

 しかし、議論すべきはその点ではありません。米軍は傭兵ではないですし、駐留経費を全額日本が負担する、ということが同盟のあるべき形なのか、という問題があります。

 在日米軍は日本のためだけでなく、アメリカの利益のためにも存在しています。アメリカにとってアジアは経済的にも重要であり、そのためにはアジアの安定が不可欠です。アジアの安定実現のためには、アメリカの安全保障のコミットメントが欠かせないことを理解してもらうための説得が必要でしょう。

――沖縄の普天間飛行場の移設計画にも、影響を与えそうです。

小谷:トランプ氏の在日米軍に関する発言は、鳩山首相の「最低でも県外」発言並みのインパクトを沖縄に与えているかもしれません。辺野古移設に関して、来年の3月には最高裁判所の判決が出ます。トランプ政権は1月末には発足しますが、翁長雄志・沖縄県知事は既にトランプ氏との対話に期待を寄せているようで、今後抵抗を強める可能性もあります。トランプ氏はこれまでの経緯を理解していないでしょうから、一層混乱を極める可能性が高い。これについても、正しいレクチャーをできる人物が政権に入るなどの必要があります。


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