2024年4月20日(土)

安保激変

2016年11月12日

――政権がどのような顔ぶれになるのか、現段階ではどこまで見えているのでしょうか?

小谷:関係者の中から「自分たちが勝てると思っていなかった」という発言を聞くくらいなので、どういう陣営になるかはまだこれからでしょう。顔ぶれが決まれば、それを把握し、日本から日米同盟の重要性やアジアで何が起きているのかなど、正しくインプットしていく必要があります。

 先述のように、まずトランプ氏が第一の課題とするのはISの掃討でしょう。それから欧州とアジアどちらをより重視するか、という選択肢になると思われます。安倍首相は欧州の指導者に先駆けてトランプ氏と個人的な関係を築き上げ、これまでの「アジア回帰(アジアリバランス)」という言葉が出てこないとしても、アジアの重要性を理解してもらう働きかけをすべきです。

――アジアには、中国の海洋進出や北朝鮮問題など深刻な問題があります。中国はトランプ氏をどのように見ているのでしょうか。

小谷:判断に困っていると思います。大きな懸念事項は、経済でしょう。トランプ氏は中国を経済的な脅威と捉えており、アメリカ人の職を奪い、経済を悪化させ国力を弱まらせていると考えています。これまでも「中国を為替操作国と認定する」と発言してきました。対中貿易赤字についても、関税をかけると言っています。他には、サイバー問題についても、中国を批判する発言をしています。南シナ海についても、詳細には触れませんが、中国のやっていることは認められない、という趣旨の発言があります。

 しかし、対話を拒んでいるわけではありません。新しい貿易協定を結ぶことに積極的だったりと、何かしら新たな経済的利益を得られれば、安全保障の面では中国と対抗することはないのではないか、という希望的観測があるようです。中国はその点を必死で見極めようとしているでしょう。

 トランプ陣営のアジア専門家が、今年8月に訪中し、王毅外交部長だけでなく楊潔篪(ようけつち)国務委員にも会ったそうです。米中はパイプ作りに励んでいますが、日本にはこのように人を送っているということはないようです。

 中国が目指す、「G2論」(新型大国関係)は、オバマ大統領には拒否されましたが、トランプ氏とならば実現できるのでは、と期待を抱いている面もあると思います。だからこそ、トランプ政権の顔ぶれが決まるまでは南シナ海問題では挑発的な行動は控えるのでは、と思います。


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