2024年4月26日(金)

安保激変

2016年11月12日

 北朝鮮問題については、自ら金正恩総書記と交渉するというトランプ氏が大統領になること、さらに韓国国内が朴大統領のスキャンダルで混乱していることもあり、またとないチャンスとなってしまうのでは思われます。

 北朝鮮は、アメリカに体制保証を求めてきましたが、その条件として核放棄を求められてきました。しかしこれまで核ミサイルの開発を急速に進めてきたのは、核保有国として認めた上での体制保証を求めているためです。トランプ氏はこれを認めてしまいかねません。トランプ氏が「自分が金正恩に合意をとりつけた。核保有国として認めながらも両国間で核軍備管理交渉をし、それによって北朝鮮の核を管理できるようになる」と勘違いしてしまえば、日本と韓国にとっては最悪の結果となります。

 また、核の問題では、イランの核合意についても強く批判しているので、イランとの関係を悪化させるかもしれません。ただでさえイランとサウジアラビアの関係悪化、不安定なサウジアラビア国内、イスラエル問題と様々な不安要素がある中で、仮にISを壊滅できたとしても中東は不安定になるでしょう。

 さらに、ロシアのプーチン大統領を高く評価していることもあり、クリミア問題についても認める発言をしてしまう可能性もあります。

――国際社会が抱える困難な問題を、より混乱させてしまいそうです。

小谷:これまで国際社会が何とかギリギリのところでとどめてきた難しい部分を、あっさりと良くない方向へ流してしまう、ということが出てくるかもしれません。そのような暴走を抑えるためには、すでにわかっているペンス次期副大統領以外にどのような顔ぶれが政権の主要ポストに就くのかが非常に重要です。

 トランプ氏はこれから政権を作るにあたり、機密情報に基づいたブリーフィングを受けます。そこで、世界中の難しい問題について知ることとなるでしょう。その中で、アジアで起きていることがどれほど深刻か、ということを認識すれば、日米同盟の重要性や中国や北朝鮮との距離感も分かるかもしれません。日本は今後、このアジアで起きていることの深刻さを発信することで、トランプ氏の認識を現実的なものにしてもらうのです。

 ただし、日本は「中国や北朝鮮の問題があり、日本の安全が揺らいでいるから、アジアにアメリカが必要」という言い方をしてはいけません。それは日本の理屈です。先述のように、アメリカがアジアにいるのは、アメリカ自身の利益を守るためだということを思い出してもらうよう、発信を続けていくべきです。日米でアジアの安定を一緒に生み出していこう、というメッセージを送っていきましょう。

  
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