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2016年11月21日

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米国建国の物語をヒップホップ音楽で語り大評判となり、今年のトニー賞を総なめした大人気ミュージカル「ハミルトン」の劇場で、観劇に訪れた次期米副大統領が観客にブーイングされ、マイノリティの多いキャストが「多様なアメリカの価値観を尊重する」よう副大統領に呼びかけ、これにドナルド・トランプ次期大統領が製作陣やキャストをツイッターで繰り返し非難するというやりとりがあった。

トランプ次期政権の政権移行チームを率いているマイク・ペンス次期副大統領は18日夜、ニューヨーク・ブロードウェイのリチャード・ロジャーズ劇場でロングラン上演されている「ハミルトン」観劇のため入場した。気づいたほかの観客は、一部は歓声を上げたものの、大勢が大きくブーイングした。

観客たちのツイートによると、上演中もペンス氏へのブーイングや、批判を込めた大きな歓声が続き、何度か舞台の進行が中断した。

カリブ海出身の孤児から独立戦争の英雄となり、ついには初代財務長官として米国経済の基礎を築いたアレキサンダー・ハミルトンの生涯をヒップホップに乗せて描く「ハミルトン」では、主役ハミルトンをラティーノ、ジョージ・ワシントンやトマス・ジェファーソンなど「建国の父たち」をアフリカ系などマイノリティ(少数民族)の俳優が演じていることも大きな特徴。

その中で有名となった「Immigrants, we get the job done(俺たち移民はきっちり仕事するぜ)」という台詞の際には、この夜の上演で多くの観客が立ち上がって拍手したという。

また、植民地アメリカを失った英国王ジョージ3世が「ちょっとお尋ねしたい。それでこれからどうするの? 自由になったはいいけど。国を導くのがどれだけ大変か知ってる?」と歌う箇所でこの夜、演じる俳優がペンス氏に直接語りかけるように歌ったところ、ほかの観客は約3分間、総立ちでスタンディングオベーションを送ったという。

芝居が終わるとキャストやスタッフが舞台上に集まり、主要キャストのひとり、ブランドン・ビクター・ディクソンさんがまず観客にブーイングはしないよう求め、すでに退席しつつあったペンス氏に、「聞いて下さい」と呼びかけた。

「今夜観客の中にお客さんがいました。ペンス次期副大統領、出ていくのが見えますけれども、聞いていただければと思います。ブーイングの必要はありません、皆さん、ブーイングするようなものはここに何もありません。僕たちはみんなここで、愛の物語を一緒に経験してるんです。(ペンスさん)お伝えしたいメッセージがあります。最後まで聞いていただきたく思います」と前置きしてから、ディクソンさんは、ペンス氏の来場を知った作者リン・マヌエル・ミランダさんとスタッフが急きょまとめたとされる手紙を、関係者を代表して読み上げた

「ペンス次期大統領、ようこそいらっしゃいました。『ハミルトン アメリカのミュージカル』をご覧いただいて本当にありがたいです」

「私たちは、多様なアメリカです。そして私たちは、警戒し、懸念しています。あなたたちの新政権が私たちを守ってくれないのではないかと。自分たちやこの惑星、子供たちや両親、そして私たちを擁護し、私たちの不可侵な権利を維持してくれないのではないかと」

「けれどもこの舞台を観たことで奮い立っていただけるよう、本当に願っています。私たちのアメリカの価値観を尊重し、私たち全員のために、全員のために働いていただけるように」

「この作品を観てくださったことを、あらためて本当にとても感謝します。いろいろな肌の色や信条や指向の、多様な男女が集まって語る、この素晴らしいアメリカの物語を」

強固な保守派のペンス氏は、インディアナ州知事として今年初め、信仰を理由に事業者が同性愛者にサービスを提供しないことを容認する州法に署名。激しい非難と抗議を受けて、後に州法を修正した。また妊娠中絶についても強く反対してきた。

劇場でのてんまつに、トランプ氏は怒りのツイートを連投した。

キャストが実際にはブーイングを止めるよう呼びかけたのを知らずしてか、「素晴らしい未来の副大統領マイク・ペンスがゆうべ劇場で、ハミルトンのキャストにいやがらせされた。カメラががんがん回ってるなかで。こんなことはあってはならない!」とトランプ氏は書いた。

さらに、「劇場は常に必ず、安全で特別な場所でなくてはならない。ハミルトンのキャストはゆうべ、マイク・ペンスというとても良い男に非常に失礼だった。謝れ!」と続けた。

これを受けて、メッセージを読み上げたディクソンさんは、「@realDonaldTrumpさん、会話は嫌がらせではありません。そして@mike_penceさんが、立ち止まって聞いてくれたことを感謝します」とツイートした。

ペンス氏自身は、フォックス・ニュースに出演した際、ブーイングされたことについて「子供たちをつついて、これが自由の音だと念押しした」と話している。

これまでにもバラク・オバマ大統領やヒラリー・クリントン氏をはじめ、各界の著名人が次々と「ハミルトン」を観劇している。

「ハミルトン」は作者で初代主演のリン・マヌエル・ミランダさんが2009年に当時作ったばかりのオープニング曲を、ホワイトハウスでオバマ夫妻の前で披露したことを機に、ワークショップを経て作品として完成。2015年1月にオフ・ブロードウェイで開幕した後、同年7月にブロードウェイに移動し、以来売り切れ状態でロングランを続けている。今年のトニー賞12部門のほか、ピュリツァー賞、グラミー賞なども受賞している。

現在はブロードウェイのほか、シカゴでも上演されており、来年には全米巡業とロンドン上演も決まっている。

(英語記事 Mike Pence, VP-elect, booed at Hamilton musical

提供元:http://www.bbc.com/japanese/38047608

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