江藤哲郎のInnovation Finding Journey

2016年12月3日

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江藤哲郎 (えとう てつろう)

ベンチャーキャピタリスト

 鹿児島県出身。1984年慶應大商学部卒業。同年(株)アスキー入社。86年マイクロソフト(株)設立に参加し、マーケティング部長代理としてWindowsコンソシアム、マルチメディア国際会議等を立ち上げる。

 92年(株)電通入社後、デジタル・コンテンツの開発とビジネス化を推進。2002年から情報システム局でSAPアジア共通会計システムを中国・アジアの30拠点に導入他、国内外の全システム開発を担当。2013年から経営企画局専任局次長として、電通が約4,000億円で買収したイージスとのグローバルIT統合の責任者。

 2015年7月、ワシントン州カークランドにInnovation Finders Capitalを設立。AI、ビッグデータ等スタートアップを日本と繋げる。家族は妻と一男。
 

 意外かもしれないが、シアトルは日本から最も近いアメリカ西海岸の都市だ。19世紀に港湾が発達し、アメリカ大陸の北西部最大都市としてアジアとの輸出入ハブの機能が整備された。その頃から海路では日本郵船の定期便が運航しており、神戸市とも姉妹都市になっている。その神戸との間で1930年に就航した氷川丸はその戦後の物語と共に日本人の記憶に刻まれている。

船からはじまり、陸空に発展したロジ

 造船業も盛んで、またワシントン・ステート・フェリーは全米最大のフェリー会社だ。陸路では大恐慌の前からグレート・ノーザン鉄道により遥か東のシカゴまで繋がっていた。現在ではアムトラック・カスケードにより北のカナダのバンクーバーまで、コースト・スターライトにより南のロサンゼルスまで鉄道が結ばれている。20世紀になりボーイングがその本社と工場を置いた事で、海と陸に加え空のロジスティックスが強化され、関連する産業の裾野が広がり人材も多く集まった。

シアトルのスターバックス ©️Naonori Kohira

 会員制の大型倉庫店コストコがカークランドの1号店を皮切りに世界に進出したのもこのインフラがあったからこそで、デパート大手チェーンのノードストロームもこの地が本拠地である。シアトル中心部にあるパイク・プレイス・マーケットにはスターバックス1号店があり観光名所となっているが、豆は南米などから船でこの街へ運び焙煎してブレンド後スタバ・ブランドで全世界に向けて出荷する。スタバしかりタリーズもそうだが、シアトル系コーヒーと呼ばれるスペシャルティ・コーヒーのグローバルブランドであり実は巨大な流通業でもある。なぜアマゾンがシアトルで起業して大成長したか? こうした地の利を十二分に活用したからと言える。シアトルは全米屈指のロジスティックス都市なのだ。

©︎Naonori Kohira

転換期にあるアマゾン

 ちなみに今アマゾンは大きな転換期にある。1994年にカダブラ(アブラカダブラが由来という)という社名で創業しアマゾンに名称変更後97年にNASDAQで上場した同社の本業は長い間EC(電子商取引)だった。このビジネスは長く利益を出しておらず配当が無い事でも知られる同社は2006年、まだクラウドコンピューティングという言葉が無い頃、AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)のサービスを開始した。以来、クラウドの世界シェアではトップに君臨し、最近の決算数回を見るとこのクラウドでは儲けを出している。強力なクラウド基盤をベースにAI開発者向けにマシン・ラーニングのモジュールも提供し、AIエンジン4強の一角を占める。

 一方皮肉なことに創業時からのEC事業ではどうしても人手が必要な様で、昨年から週平均200人のペースで大量採用を続け遂に従業員数は16万人を突破した。倉庫管理や出荷など労働集約的な作業には早くからロボット技術を導入していても、まだ人間の作業が必要だという現実を今後自らのAI技術でどこまで解決できるのかが注目される。

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