WEDGE REPORT

2016年12月8日

»著者プロフィール
閉じる

風樹茂 (かざき・しげる)

作家、国際コンサルタント

作家、国際コンサルタント(kazakishigeru@gmail.com)。1956年、北海道生まれ。東京外国語大学スペイン語学科卒業。メキシコ留学後、中南米の専門商社を経て、南米アマゾンの奥地でODAプロジェクトの鉄道建設にかかわる。その後は、シンクタンク、研究所勤務などで、首相向けの政策提言、ODA援助、海外投資、NGOプロジェクトに従事。イスラム開発銀行のコンサルタントも経験し、30数カ国を踏査。石油関連事業でカタール、ベネズエラに駐在。

テロ現場は様変わりした

 半年ほど置いて、この7月~8月にパリを訪れた。滞在中、最初の標的となったシャルリー・エブド社とバタクラン劇場に徒歩10分ほどの距離で挟まれている鉄板焼きの日本食レストランの女将に話をきいた。

 「新聞社のときはたいしたことがなかったけど、劇場のときは大変だったわ。客たちの携帯が一斉に鳴って、通りからは次々と店に人が逃げ込んできた。パトカー、救急車がどんどん走っていったし、それで、みんな食べ終わったら、店も早めに閉めた。根の深い問題だから、テロはまだまだ続きそう。劇場は外側のテラス席を狙われたレストランと違い、中をやられたから、大変よ。一度、コンサートやったけど、お客さんはトラウマがあるので、なかなか盛り上がらなかったみたい」

 劇場を訪れると、向かいの生け垣にあった花束はすっかり片付けられていた。この11月12日に劇場の再開を記念し、スティングがロックコンサートを開いた。

神聖な祈りの場所だった 

 一方、レピュブリック広場の変貌には目を見張った。喉元過ぎれば熱さを忘れるというのは日本人だけではない。半年前は、神聖な祈りの場であったが、今、マリアンヌ像の柱は、落書きで溢れ、終電に乗り遅れた若者が眠る薄汚い日常に回帰してしまった。広場ではホームレスもあちらこちらで眠り、トルコのクルド人の政治団体が、「ISから脱会した激戦地コバニを再建しよう。なぜ、エルドアンはイスラム国を支援するのか」と訴え、人々の署名を求めていた。

 記念行事のたびに、当局はマリアンヌ像の薄汚い落書きを拭い去っている。

悲しみは落書きに拭い去られた

関連記事

新着記事

»もっと見る