BBC News

2016年11月30日

米国の主要公民権団体「南部貧困法律センター(SPLC)」は29日、ドナルド・トランプ氏が次期米大統領に当選して以降、マイノリティ(少数者)差別などを動機とした嫌がらせや脅しの事案が900件近く発生していると、調査報告を発表した。SPLCはトランプ氏に対して、「嫌がらせ撲滅のため、強力に行動」し、「自分が傷付けたコミュニティーに手を差し伸べる」よう呼びかけている。

SPLCは教職員団体や他の人権団体と合同で、トランプ氏の言動が米国社会に与えた影響について指摘。ソーシャルメディアや報道記事のほか、憎悪や差別による被害報告を呼びかけるオンライン通報ページで情報を集めたところ、マイノリティが暴力を振るわれたり威圧されたりした事件が多発していることが確認できたという。

SPLCの調査報告書「10日後」は、こうした事案の中には、11月8日のトランプ氏の勝利に直接関係するものも含まれるという。

SPLCのマーク・ポトク上級研究員はBBCに対して、「壁の落書きに内容や、誰かが怒鳴った言葉の内容が、トランプ氏に直接関連するものだという意味で、犯行の多くはトランプ陣営に直接結び付くものだ」と話した。

<SLPC報告書が挙げる憎悪事案の動機別件数>

(上から、反・黒人、反・移民、反LGBT、反イスラム教徒、反ユダヤ人、反・女性、トランプ関係全般、白人ナショナリスト、その他)

SPLCによると、黒人の乗客がバスの後ろの席に移動しろと言われた事例が複数報告されている。

黒人がバスの後方にしか座れなかったのは、米国南部で1960年代まで続いた人種隔離政策の象徴的な施策のひとつだった。アラバマ州では1955年に黒人女性ローザ・パークスさんが席の移動を拒否したことから、バス・ボイコット運動に展開し、1956年に最高裁がバスに関する隔離条例の撤廃を命令。公民権運動が高まるきっかけとなった。

SPLCの報告書によると、このほか移民の信者の多い教会の壁に「Whites Only(白人限定)」や「Trump Nation (トランプの国)」などと落書きされた事例があった。また、同性愛の男性が車から引きずり出され、「お前らみんな殺していいって大統領が言ってる」と罵られ、暴行を加えられた事件もあったという。

<SLPC報告書が挙げる憎悪事案の多発地域>

(濃緑から薄緑へ、公共の場、小中学校、職場・店頭、大学、プライベートな場所)


SLPCが同時に発表した別の報告書「選挙の後――トランプ効果」では、教育者1万人に調査したところ、「トランプ効果」と呼ぶものに学校の雰囲気や状況が悪影響を受けたという回答は9割に上った。

米教師連合(AFT)のランディ・ワインガーテン会長は、「次期大統領はそろそろ、自分の名をかたって行われる憎悪まみれの行動を、効果的に、そして疑いの余地なく、徹底的に非難すべきだ」と述べている。

報告書はさらに、25%以上の教師が「選挙中の物言い」に関連した差別や嫌がらせの事案を目撃していると指摘。内容としては、鍵十字の落書き、身体的な暴力、暴力を振るうと威圧する言動などが含まれるという。

トランプ氏は22日、米紙ニューヨーク・タイムズとの広範なインタビューの中で、「alt-right(オルタナ右翼)」を自称する極右集団について、「彼らを非難する。否定し、非難する」と述べている。いわゆる「alt-right」は19日にワシントンで開いた集会で、トランプ氏の勝利をナチス・ドイツ式敬礼で称えていた

<11月8日の大統領選後に報告された憎悪事案>

SLPCはこれまでも、トランプ氏が新政権の首席戦略官に極端な右派系記事を掲載するオンラインメディア「ブライトバート・ニュース」の最高経営責任者だったスティーブン・バノン氏を選んだことを、強く非難してきた。SLPCはバノン氏について、「白人民族ナショナリスト・プロパガンダの広告塔に、『ブライトバート』を仕立て上げた張本人」だと糾弾している。

(英語記事 'Trump effect' led to hate crime surge, report finds

提供元:http://www.bbc.com/japanese/38153662

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