2024年4月20日(土)

前向きに読み解く経済の裏側

2016年12月5日

日本は3K労働者不足を移民で補うべからず

 日本の入国管理政策は、「高度な人材は積極的に受け入れるが、単純労働者は受け入れない」ということを基本としています。そこには3K労働は移民に任せよう、という発想はありません。むしろ、移民が流入して単純労働者として安い賃金で3K労働に従事すると、日本人の雇用が失われてしまう、という事が懸念されているわけです。

 そうした中で、介護労働者が不足しているため、外国人を介護労働者として受け入れようという人が増えてきました。労働者として受け入れて、仕事をやめたら帰国してもらうのか、移民として日本に移り住んでもらうのか、という点は論者によって区々ですが、本稿ではそこは置いておきましょう。

 日本では最近まで、介護労働者だけが不足していました。それならば、介護労働者の待遇を改善して、一般の失業者が介護に従事するようにするべきでしょう。「財政赤字を減らすために介護報酬を低く抑え、それによって介護労働者の賃金が低く抑えられている」ことが原因ならば、選択肢は二つしかありません。「もっと税金等を投入して、介護労働者の待遇を改善する」「介護労働者不足なので、介護サービスを半減する。しっかり介護して欲しいなら、自費で介護師を雇うべし」の二つです。

 最近になり、少子高齢化と景気回復の影響で、全般的に労働力が不足して来ました。「それならば、幅広く外国人労働力を活用しよう」という論者も多いようですが、これも感心しません。労働力が不足してきたからこそ、ようやく失業者が減り、非正規労働者の待遇が改善してワーキング・プアがマトモに暮らせるようになったのです。これからは、省力化投資が増えて、日本経済の効率性が高まっていくと期待されます。

 ここで外国人労働力を導入して労働力不足が解消してしまったら、せっかく減った失業者が増え、ワーキング・プアの生活が再び悪化し、せっかく期待された日本経済の効率化も進まないでしょう。

 ちなみに、「技能実習生」といった名目で実態としての単純労働者が流入している、実際には不法滞在している外国人が単純労働に従事しているケースも多い、といった話も耳にしますが、筆者は詳しくないので、その点についての言及は控えておきます。

 企業にとっては、失業者が増えて非正規労働力が安価に雇えることは都合が良いかも知れませんが、それは決して日本経済全体にとって望ましいことではない、ということなのです。充分気をつけたいものです。

  
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