2024年4月20日(土)

Wedge REPORT

2016年12月7日

世界市場を見据えて開発された新ブランド「2016」のマグカップ(写真・WEDGE)

 プロジェクトに参加した計16社を一体的に運営するために商社6社と窯元2社が出資して自力で販売、ブランドを普及させる新会社「2016株式会社」を15年5月に設立。今年10月からは国内で本格的な営業を始めたばかりだ。

 こうした動きは産地を刺激した。17事業のひとつ「つたうプロジェクト」にも16社が参加、経営が弱小でもどうやって自助努力で市場に自分たちの思いを伝えていくかを議論している。具体的には、窯元が強みと弱みを自己分析することで、既存の商品を「リブランディング」することなどが狙いだ。

 指導するのは東京のコンサルティング会社、メイド・イン・ジャパン・プロジェクト(MIJP)。同社の赤瀬浩成社長は岡山県内にある家業の桐ダンス生産の会社をインテリア企業に再生させ、そのノウハウをベースにMIJPを起業、全国の伝統工芸の産地にネットワークを持つ。

 県産業労働部理事で、有田焼創業400年事業推進グループリーダーの志岐宣幸氏はこう語る。「『2016』のような会社ができたことは、いい意味で想定外。従来通りの補助金の手法では現状を大きく変えることができない。たとえば、有田をメインの会場に1996年に開かれた『世界・炎の博覧会』では多額の補助金を投入したが、持続的な効果はなかった。いずれ有田焼の売上が回復すると考えていた県側にも産地側にも危機感がなかったからです」。

 事実、有田焼業界全体の売上高は、91年の249億円をピークに15年は6分の1以下の41億円にまで落ち込んでいる。有田焼の関係者の一人は「伝統に胡坐をかいて、時代の変化を感じて現代の生活に合った製品を供給できていないことが凋落要因の一つ」と自戒の念を込めて話す。

 こうした現状に危機感をおぼえて取り組んだのが「2016」のプロジェクトである。ただ、同プロジェクトには伏線があった。それは、補助金を全く使わずに新ブランドを開発した産地の商社、百田陶園の取り組みだ。同社の百田憲由社長は言う。「今の産地は先達の遺産に頼りきりで飯を食っている。世界中の家庭で使われるような新しい有田焼ブランドを作るべき。そのためには、上流のものづくりから下流の流通まで仕組みを変えていく必要がある」。こうした発想から銀行を口説き落として借り入れ、独自で1億5000万円を投資して新ブランド「1616」を創設した。


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