2024年4月25日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年12月9日

 この社説は安倍首相のプーチンへの接近を批判したものです。北方領土問題という日本の主権にかかわる問題を打開しようとすることには、欧米、特に米国の有識者もそれなりに理解しているでしょうが、同時に、彼らは、対露制裁を日本が掘り崩すことにならないか、日米関係にくさびを打つというロシアの狡猾な外交に騙されないかとの懸念も持っているように思われます。

日本は制裁破りを避けるべき

 この社説が提起しているG7の団結については、日本は制裁破りを避けた方が良いと思いますが、ドイツもウクライナを迂回するガス・パイプラインのノルド・ストリーム2をポーランドなどの東欧諸国、イタリアの反対にもかかわらず推進しており、制裁破りの指摘を受けずにできる事はあると思われます。またトランプ大統領の選出は米国自身の対露姿勢の変更にもつながりうるので、情勢を注意深く見つつも、G7の団結維持をそれほど気にする必要がなくなる可能性もあります。

 しかし、もし政府が対露関係改善で中露離間を図るということを考えているのであれば、それは無理な願望ではないでしょうか。

 たとえばガスについては、2018年から30年間、年間380億立方メートルをロシアが中国に供給するという40兆円規模の協定ができています。政治的には中露間には準同盟条約とも言える中露善隣友好協力条約があります。ロシア人は中国に警戒心を持っていますが、「ジュニア・パートナー」としてでも対米関係上、協力していくしかないと判断していると思われます。長大な国境を共にし、中国北東部には1億以上の人口があり、ロシア極東には600万くらいしかいない中、またGDPで中国の約10分の1しかない中、そういう選択をするのが当然でしょう。ちなみにロシアのGDPは2015年のIMF統計では韓国以下です。

 北方領土問題については、4島は日本の領土であるとの正当な立場を堅持したまま(固有の領土であるいかなる島も放棄することなく)2島が先行返還されるということであれば、それは成果と言えるでしょう。

  
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