2024年4月20日(土)

Bangkok駐在便り

2016年12月9日

 11月23日〜26日、バンコク国際貿易展示場(BITEC)でASEAN最大の工作機械・金属加工の展示会「METALEX」が開催された。今年は例年よりも区画を45%拡大し、「THE GRAND METALEX 2016」として装いも新たになり、製造業に関わる多くのビジネスマンが駆けつけた。

メイン会場に近い入口。同会場のリノベーション後、こけら落としとなったMETALEX

 「METALEX」は1987年に第1回がスタートし、毎年着実にスペースを拡大。ASEAN最大の工作機械・金属加工の展示会ということもあり、近隣諸国から新たな商材を求めてメーカーや商社の人間が集まり、タイの製造業関連企業はこの4日間のために1年がかりで準備をするほどの重要なイベント。成約に結びつく機会が多いことも特徴で、主催のReed Tradexは会場での売り上げ予測を昨年の60億バーツから今年は100億バーツとした。来場者数は4日間で延べ9万人以上(主催者発表)。

出展ブースは日系企業が6割

 言うまでもなく、タイはASEANを代表する製造業の一大集積地。自動車関連を筆頭に、電子部品、家電といった工場の数はローカルを含めて数限りなく存在し、製造業に関わる企業にとっては絶対に目を背けることができない一大イベントとなっている。

 企業の構成は日系企業(約60%)を中心に韓国、台湾、中国、英国、イタリア、ドイツ、シンガポールなど多彩。出展企業は昨年800から、今年は1500とほぼ倍になった。

 ここ数年、タイは自動車販売がふるわず、消費は冷え込み、景気は停滞。そこに追い打ちをかけるように続いたプミポン国王の崩御。景気の悪化に加え、消費を促すマインドからはほぼ遠いのが実情。しかし、政府も経済を盛り返そうと考え、プラユット暫定首相が「国王が崩御されようとも経済を止めてはならない」と訴えたように、景気の復活を目指して、同イベントに課された期待は小さくない。また、日系企業を中心に、外資の製造業がタイ経済を支えてきたことは間違いなく、将来を占う上でも、同イベントの成否には注目が集まっていた。

 会場で会ったある大手工作機械メーカーのAさんは「初日から今年は、いいイベントになるのではないかと感じていました」と話す。これまで各メーカーは、まるで在庫品のような売れ残り製品を当たり前のように展示し、新製品に期待を持って来場してきた人たちを裏切ってきた。それが今年は、どこも本腰を入れて、自社技術をアピールするための最新製品を並べていたという。「こういったイベントは初日の感触でわかるんですよ。来場者のなかには来ようかやめようか迷っている人もいます。だからこそ初日に行った人の口コミだったり、情報が大切になるわけです。弊社ブースのみならず、各メーカーが真剣にブース作りに取り組み、頑張ることで生まれた相乗効果ですよね。『今年のMETALEXはなかなかおもしろい』という情報が初日から広まれば、自ずとその後も来場者が増える。そんな雰囲気が漂っていましたね」。

 別の工作機械メーカーの代表に話を聞いたところ、4日間ですでに見積もりが数件、そしてほぼ成約に至った機械もあったという。また、工作機械メーカーの御三家の一つであるオークマのブースには、数千万はくだらないタイ初登場の5軸工作機械に「SOLD OUT」と貼られ、好感触ぶりを感じずにはいられなかった。ほかの御三家のマザックやDMG MORIのブースにもひっきなしに来場者が押し掛け、実機を試しながら営業スタッフと話し込む様子が続いていた。

 また、ろ過装置を扱う日系企業の代表は「一度、現場を見て見積もりしてほしい」といった声を多くもらったという。環境保全の基準がタイでは高まり、環境系企業の引き合いが増えているのもタイのモノづくり現場のトレンド。ブースの宣伝効果を感じつつ、「来場者は確実に昨年よりも増えたのはないでしょうか」と感触を感じていた。また、工作機械の周辺機器などを扱う企業の社長は「わざわざ弊社をピンポイントで訪ねてきてくれることもありました。弊社はマニアックな製品を扱っていますが、製造業においてはやはり差別化が課題になってきて、追い風も感じています。とにかくブースにいらっしゃる方たちは個々で“テーマ”を持っています。そこが昨年との大きな違いですね。反応は上々でしょう」と振り返った。


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