2024年4月19日(金)

対談

2016年12月9日

矢野:昨年の日本シリーズで優勝したソフトバンクの工藤監督がインタビューで、「今年はベンチの雰囲気作りがすごくうまくいった」と話していました。ある控えの選手がものすごく良い働きをしていて、ピンチで雰囲気の悪くなったベンチを盛り上げてくれてとても助かった、と言っています。このようなことは、ビジネスの現場でもきわめて定量的に起きていることなんです。

 コールセンターの場合、個人ごとの受注率には差があって、日によっては4番バッターのような人が集まることもあれば、そうでない日もあります。では4番バッターが集まっている日は全体の成績がいいのかというと、そのような相関はないんです。4番バッターばかりを集めても、チームとして強くなるわけではない。

飯田:コールセンターにはチームワークのイメージがないので、チームの雰囲気は関係ないんじゃないかと思いがちですが、そんななかでもムードは重要なんですね。人格の多様性と行動の多様性があった方が、空気が良くなり、生産性も上がるというのは意外でした。

矢野:良いムードにするのがいかに重要かということですね。個人プレーでマニュアル通りやる仕事であっても、全体のハピネスが効いてきますし、休み時間の雑談や、声をかけあうということが全体に反映してくるんです。

飯田:確かにチーム労働では、空気が重要ですね。大学のゼミもうまくいく学年とうまくいかない学年が明確にあって、その差がどこにあるのかが見きわめにくいんです。すごく優秀な学生を集めたらうまくいくかというとそうでもない。時間に正確で求められた課題をしっかりこなす学生ばかりだからいいわけでもない。明確に説明するのは難しいですが、やっぱりムードメーカーのいる学年の方が不思議とうまくいきがちです。(つづく)

矢野和男(やの かずお)
1984年早稲田大学物理修士卒。日立製作所入社。半導体研究を経て2004年頃からウエアラブル技術により収集したビッグデータ分析や人工知能を活用した企業業績向上研究で注目を集める。開発した汎用AIは既に57案件に活用されている。東京工業大学大学院特定教授。文科省情報科学技術委員。国際的な賞を多数受賞。著書は『データの見えざる手』(草思社)。
飯田泰之(いいだ・やすゆき)
1975年東京都生まれ。エコノミスト、明治大学政治経済学部准教授、シノドスマネージング・ディレクター、財務省財務総合政策研究所上席客員研究員、規制改革推進会議委員。東京大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。著書に『昭和恐慌の研究』(共著、日本経済新聞社)、『歴史が教えるマネーの理論』(ダイヤモンド社)、『ダメな議論』(ちくま新書)、『思考の「型」を身につけよう』(朝日新聞出版新著)、『地域再生の失敗学』(編著、光文社新書)など多数。

  
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