2024年4月19日(金)

Wedge REPORT

2016年12月15日

スマホに苦しめられた任天堂、ポケモンGOも恩恵はわずか

 任天堂は現在、経営状態が思わしくない。原因は2010年以降にスマホ市場が大きくなったことにある。

 据え置き型ゲーム機である「Wii U」は、ソニー・インタラクティブエンタテインメントの「PlayStation 4」に販売台数で追い抜かれ、元気がない。欧米を中心とした海外の市場は、「スマホではできない、高度でやりがいのあるゲーム」を求めている。PS4はそこにマッチしてヒットしたものの、Wii Uは性能不足から、高度なゲームを求める市場とのミスマッチを起こした。

 携帯ゲーム機である「ニンテンドー3DS」は、初代モデルの発売からすでに5年が経過し、動きが止まってきている。日本の若年層には底堅く支持されているものの、海外市場では「気軽なゲーム」の市場をスマホに奪われている。

 その中で任天堂は、17年3月発売を目指し、新型ゲーム機「Nintendo Switch」を開発中だ。Switchは、スマホ、タブレットに使われる半導体をうまく使い、テレビにつなげば「据え置き型ゲーム機」に、持ち出せばバッテリーで動く「携帯ゲーム機」になる、両にらみの戦略をとる。

 それと同時に、任天堂が本格化するのが「スマホアプリ」への取り組みだ。ポケモンGOの収益は主にナイアンティックのもので、任天堂にはごく一部しか反映されないが、任天堂自身が運営するゲームがヒットすれば、莫大な利益がもたらされる。少なくとも株主は、任天堂にもスマホ市場でひと稼ぎしてもらいたいと期待している。9月7日にスーパーマリオランが発表された翌日、任天堂の株価は、スマホ市場への期待感もあり、取引終了までに25%もアップした。

 一方で、スマホ向けゲームを出せば儲かるというほど、甘くはない。既存のゲームメーカーが有名なゲームタイトルの名を冠したスマホ向けゲームを提供しても、「パズドラ」「モンスト」のような大ヒットにはならない。ファンも目が肥えてきており、「単にスマホの上で動いているだけ」では満足しない。「スマホの上で動いていて、しかも面白い」ゲームでなければ、収益には結びつかないのである。

 実は任天堂にとって、スーパーマリオランは、スマホへの「2回目の挑戦」である。今年3月、同社は「Miitomo」というスマホアプリを出した。Wii以降同社が使っている「Mii」というアバター(自分の姿に似せたキャラクター)を使い、コミュニケーションを楽しむアプリだ。これもスタート当初は話題を集めた。

 しかし現在、Miitomoの人気は急落し、大きな収益を上げるには至っていない。理由は単純だ。ゲームとしても、コミュニケーションツールとしてもシンプルでつまらなかったからだ。人々はダウンロードはしたものの、すぐに飽きて使わなくなった。使わない・遊ばないアプリに課金する人はいない。


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