BBC News

2016年12月8日

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パキスタン国際航空(PIA)のPK-661便が7日、北部ハベリアンで墜落し、乗員乗客48人全員が死亡した。パキスタン当局が明らかにした。

北西部チトラルから首都イスラマバードに向かう途中で、イスラマバード北方約70キロの山間部に墜落した。

PIAによると、乗客42人、乗員5人のほか、地上整備士が1人搭乗していた。

外国人の乗客は3人で、オーストリア外務省がオーストリア人2人の死亡を後に確認した。中国国営メディアが、中国国籍の乗客が1人死亡したと伝えている。

人気歌手からイスラム教の説教師に転身したジュナイド・ジャムシェドさんも搭乗していたという。

ナワズ・シャリフ首相は、「深く嘆き悲しんでいる」とコメントした。

国営の同航空は、2006年の墜落事故で44人が死亡するなど、過去にも安全対策の不備を問題視されてきたが、今回の事故については厳しい検査を十分に実施してきた機体なだけに「技術的ミスの余地はまったくない」と主張している。

PIAのアザム・セーガル会長は「悲劇的な事故で、責任逃れをするつもりはない。自分たちの航空機で、自分たちの乗客で、非常に悲しいことが起きたと受け止めている」と話した。

会長は、事故原因の調査は実施するものの、「現時点では墜落現場から遺体を回収し、イスラマバードへ運び、遺族に引き渡すことが最優先だ」と述べた。

「偉大な英雄」

事故機は現地時間午後3時(日本時間午後7時)ごろにチトラルを出発し、到着予定時刻の直前、離陸から約90分後に連絡を絶ったという。

人気歌手ジャムシェドさんと夫人の名前が乗客名簿にあり、複数の消息筋が地元メディアに、夫妻は事故機に乗っていたと確認した。

1980年代に一世を風靡したポップロックバンド「バイタル・サイン」のメンバーだったジャムシェドさんのツイッター・アカウントは、50万人近い人がフォローしており、大勢が追悼の言葉を寄せている。

「バイタル・サイン」の1987年のヒット曲「ディル・ディル・パキスタン」は、国の「非公式の国歌」とまで言われている。

英ボクシング選手で五輪銀メダリストのアミール・カーンさんは、「PIA機がパキスタンで墜落。友人の@JunaidJamshedPKも乗っていた。愛する家族を失った全遺族に同情する」とツイートした

葬儀のためにパキスタンに向かう途中のジャムシェドさんのおじ、サヒブザダ・ジェハンギルさんはBBCに対して、「個人的な損失というだけでなく、国家的損失だ。そして人類にとって大きな損失だ。みんなまだショック状態にある。今までずっといろんな人と話をしていたが、飲まず食わずで泣いている人たちもいる」と話した。

「人類に素晴らしい貢献をした男だった。偉大な英雄、偉大な伝説を失った。とても、とても悲しい日だ」


ジュナイド・ジャムシェド――ポップスターから説教師に

ジュナイド・ジャムシェドさんは、パキスタンのポップス音楽界をけん引するパイオニアのひとりだった。

保守的な軍事独裁政権を率いたムハンマド・ジア・ウル・ハク大統領が1987年に死亡したのを機に、パキスタンではポップス音楽が一気に花開き、ジャムシェドさんがリードボーカルだった「バイタル・サインズ」は今でも当時の最高のバンドのひとつだったと評価されている。

2001年9月11日の米同時多発テロを機に、次第に音楽から離れ、宗教の世界に近づいて行った。イスラム教徒に信仰の重要性を説く伝道運動「タブリギ・ジャマアト」に影響され、ひげを長く伸ばし、伝統服クルタ・シャルワルしか着なくなり、説教師のターバンを巻くようになった。

新しく生まれ変わったこの姿で、ジャムシェドさんは神や預言者ムハンマドを称えるイスラム教の讃美歌ナアトを無伴奏で歌う、歌手となった。

この時期にジャムシェドさんは、「J.」(ジェイ・ドット)というファッション・ブランドを立ち上げ、現代的な感覚でデザインした伝統服のラインを展開。「J.」はパキスタン国内の主要都市をはじめ、中東各地や英国でも支店を展開している。

3人の妻のうち、一番若い夫人が事故機に同乗していたという。


(英語記事 Pakistan International Airways crash leaves no survivors

提供元:http://www.bbc.com/japanese/38245911

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