2024年4月24日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年12月13日

 この論説で、米国はアジアの同盟国を守ると述べていることは安心材料です。米国の国防予算を拡大し、軍備の増強を図ることは、トランプ周辺がしきりにいっていることですから、まず間違いないでしょう。論説は、アジアに配備する軍事力も増強し、中国に傾いたバランス・オブ・パワーの回復を図るといっているようですから、これも日本として歓迎です。

 論説の筆者は、クリントン政権でCIA長官を務めており、元来民主党系だと思いますが、国防予算の強制削減措置を撤廃するとのトランプの主張に賛同したことが、トランプ陣営に参加した主たる理由だと筆者自身、本年9月の参加当時、説明しています。

南シナ海、東シナ海で中国がやっていることは現状維持に対する挑戦

 しかし、それ以上のことは明らかではありません。現状維持への挑戦は認められないと言いますが、南シナ海、東シナ海で中国がやっていることは現状維持に対する挑戦以外の何物でもありません。中国の拡張主義を非難していますが、米国のとるべき行動は明らかではありません。レッドラインを引き直し、枢要な利益を定義し直すこととの関係で、南シナ海や東シナ海はどう位置付けられるのかにも不安が残ります。

 現状に鑑みれば、アジアの現状維持に挑戦しないという中国のコミットメントと引き換えに、米国は中国の体制を受け入れるという論説の末段がいう取り引きはいかにも奇怪な発想です。しかし、論説のこの下りを読んで思うことは、トランプ政権は、色々な要素を混ぜこぜにしたトランプ次期大統領得意の取り引きを中国と試みる可能性があるのではないかということで、日本としては注意が必要なように思います。

 オバマ政権がアジアインフラ投資銀行(AIIB)に反対したことは、戦略的間違いだとワシントンで認識されているとは知りませんでしたが、これも上述の取り引きの駒なのでしょうか。しかし、トランプが中国にいいように使われかねない銀行にお金を出すようには思えませんし、議会の共和党がこれに応ずるようにも思えません。

  
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