岸本葉子「こんなふうに年をとりたい」

野の中にすがた豊けき一樹あり
風も月日も枝に抱きて

　明治42（1909）年生まれの女性歌人、斎藤史〔ふみ〕が、88歳を迎える年に詠みました。

　88年の間には、穏やかな日々ばかりではなかったはずです。逆風にさらされることもあったでしょう。それらをすべて受け止めて、いよいよ悠然とそびえる木。

　老いてこそたどり着ける境地のあることを、明治から平成まで生きた女性と、万葉人と、ふたりの歌が、私に教えています。                                     　　　　　　  

◆ 「ひととき」2010年4月号より

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