世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年12月21日

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 この論説はEU・トルコ関係が今直面している困難を良く描写しています。なぜそうなったのかについては、EU側の言い分が正しく、エルドアンの権威主義的統治に問題があるとしています。クーデタ後のエルドアンの弾圧の行きすぎなどを見れば、これにも一理ありますが、もう少し歴史をさかのぼると、EU側のトルコ加盟への消極的姿勢が今の状態をもたらした遠因であると言えるでしょう。EUがトルコを暖かく迎え入れる姿勢を示し、法制度もEU加盟国にふさわしいものにすべしとの対応をしていたならば、こんなことにはならなかったかもしれません。

EU候補国から離脱?

 問題は、今後どうするかです。この論説は、エルドアンが来年、EU加盟候補国であることから離脱する国民投票を行う可能性があり、これは危険であると警鐘を鳴らしています。しかし、これはやってもらえばいいのではないでしょうか。今のトルコがEUに加盟することはありえないというのがフィナンシャル・タイムズ紙の判断ならば、国民投票で離脱派が勝ってもBrexitのようなことにはならないでしょうし、加盟候補国に留まる結果が出れば、それはそれでいいでしょう。

 現在のEU・トルコ関係の悪化が、NATOの一員としてのトルコの地位に影響を与えるという地政学上の問題がありますが、トルコもNATO脱退は考えていないでしょうし、米国もそれを望んではいないでしょう。経済的にはトルコはEUの関税同盟の一部であり、それを続けることで良いと思われます。無査証渡航の権利がトルコ人に与えられれば、EUに加盟したのとあまり変わらない関係になります。

 トルコは地政学的に重要な位置にあります。それを考え、できるだけトルコを抱き込んで行くことを基本として政策展開をすべきであるように思われます。無査証渡航は難民をトルコに留め置くことの代償として約束したことであり、原則的には約束は守るべきでしょう。

  
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