2024年4月25日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年12月22日

 この論説が紹介しているボールドウィン教授の分析は今日の貿易のよく知られた重要な側面を巧く整理したものと思います。そういう実態を知れば、トランプといえども現在の体制に無暗に挑戦は出来まいというのはその通りでしょう。その観点からは、NAFTAをどうするつもりかが注目されるでしょう。

トランプの本気度

 しかし、そのことと、ルールに基づく更に自由で開放的な枠組み作りを目指すかどうかとは少し違うことのように思われます。トランプにはそういう意思はなく、その努力をぶち壊す能力はあるように思われます。リマのAPEC首脳会議でニュージーランドの首相は、Trump Pacific Partnershipと呼ぶことでも構わないと冗談で言いましたが、11月21日、トランプはDay OneにもTPPからの離脱を通告すると表明しました。

 代わりに、「雇用と産業を米国に取り戻す公正な二国間協定」を交渉するとトランプは述べましたが、本気なのかどうかは判りません。トランプは二国間協定の方が圧力をかけ易く、有利な条件を引き出せると踏んでいるのかもしれませんが、TPPには参加し得ても、米国との二国間協定には応じない国もあるでしょう。日本としても、TPPの批准を進めている状況にあって、その原則的立場をおいそれと放棄することにはならないでしょう。二国間協定の積み重ねでは成し得ず、多国間協定でしか出来ないこともあります。国際的なルールの構築と安全保障上の意味合いを持つ集団の形成ということであれば、それは多国間協定によるということでしょう。

  
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